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痛みと衝撃で、フラッシュバックする。
「あ、あぁ……あああああっ!」
カタカタと悟の身体が震えだし、頭を抱えると壊れたように悲鳴を上げた。それから、シーツを手繰り寄せては晴臣の腕から逃れようと必死にもがいた。
「悟っ!?」
「いや、嫌だっ!」
噛んだ部分から知らないフェロモンが入ってくる。毒が回ったように眩暈がして気持ち悪い。
犯されてるのだ。Ωの自分が、知らないαに犯されている。
悟は、すでに晴臣を見ていなかった。わからなかったのだ。晴臣は悟やΩの使用人のことを考えて、普段からフェロモンを表に出さないようにしている。その上、今の悟はパニック状態に陥って判断能力も欠けていた。それが故に、体内に溶け込んでいく他人の……ましてやαのフェロモンなど受け入れられなかった。
「晴臣様、晴臣様!」
「ここにいるよ、悟……大丈夫だよ」
「違う……知らない! 嫌っ、晴臣様!」
晴臣に助けを求めて手を伸ばしても、背後の誰かに抱き締められるだけ。それこそ悟が求める晴臣なのに、違うと断定して振り払おうとする。
「……そう。でも、もう止まれないって言ったよね」
「ん、んう……!」
晴臣は身体を起こして、悟を押さえつけた。
独占欲が湧き上がる。他人が悟を見る嫉妬心、限りある時間の焦燥感。それは、今まで心の中に閉じ込めていた醜いものだった。
膨らんでしまった性器の根元は抜けそうにない。それを悟の蜜孔へ押し込めば、悟の態度とは対照的に深く絡んで。
「悟……っ!」
「あっ……や、嘘。嫌だ……いや」
とっくにはち切れそうだったものは、数回の抽挿で呆気なく果てていく。
熱いものを注がれて、悟は呼吸をすることを一瞬忘れてしまった。ただ、ひくん、と嬉しそうに反応する身体は、射精を施している。
なんてはしたない。
力が抜けた悟は、身体をベッドへ沈めた。まるでヘドロの中へ沈んでいっているような、そんな感覚だった。
晴臣はベッドへ腰かけて、悟を見つめていた。
頭をそっと撫でれば、さらさらな黒髪が指を通り抜ける。すると、悟の表情が穏やかになったような気がして心が安らいだ。
晴臣の理性が働いたのは、長い射精が終わったあとだった。ぐったりした悟へ口づけようと唇を近づけた時、瞬時に血の気がなくなったような気がした。
虚ろな瞳で、悟はずっと震えていたのだ。目尻は色濃くなって涙の跡がいくつも出来ていて。
そこで、とうとう悟を壊してしまったのだとようやく自覚した。
朝になったら、どんな顔をして悟に会えばいいのだろう。どんな風にしても、悟は傷ついてしまうのだろうか。悟は健気で、自分を犠牲にしてでもなんでも受け止めようとしてくれる。しかし、その気持ちが痛々しい。
悟を愛しすぎた。触れることさえも、今になっては罪に等しいくらいに。
晴臣は胸が苦しくなり、洗面所へ急ぐ。止まらぬ咳は酷くなるばかりだ。そして、手に受け止めきれなかった血が指の間から零れて、ポタポタと洗面台を汚していった。
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