アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
89
-
「晴臣様」
バルコニーへ足を運ぶと、晴臣がゆったりとくつろいで紅茶を飲んでいた。悟は晴臣の姿を見て、足が竦んでしまったが勇気を出して名前を呼ぶ。
晴臣との間に微妙な空気が流れていることもあって、晴臣を避けるべきかと考えていたが、結局好きだから会いたいと思ってしまう。それに、そういう行動をとると朝の気遣ってくれた晴臣に対して失礼だと判断した。
ドキドキと鼓動が鳴って緊張をしていると、晴臣が振り向いて満面の笑みを見せる。
「良かった、来てくれて。一緒にお茶しようか」
「……はい」
晴臣が笑ってくれている。そして、悟を快く出迎えてくれている。
それが嬉しい。嬉しくて、嬉しくて、かあっと悟の頬が温度を上げた。
「その前に、こっちにおいで?」
「?」
意図がよくわからないまま晴臣のそばへ寄ると、両手で頬を包まれる。そのままじっと見つめられて、なんだろうと思えば晴臣はほっと安心したように柔らかく微笑んだ。
「うん……朝よりは顔色良くなってるね。クッキーがあるんだけど、食べれそう?」
「晴臣様……。はい、いただきます」
晴臣のティーカップを確認すると、ほとんど中身はなくなっている。それなら新しいのをいれ直そうと悟が準備に取り掛かっていると、コンコンとノック音が聞こえてきた。
その方向を見やれば、使用人が立っていて。悟が入るようにと目線で合図を送ると、申し訳なさそうにバルコニーへ入ってくる。
「あれ、どうしたの?」
「申し訳ございません、晴臣様。西園寺さんにパーティーのことでご相談がありまして……」
「あ……」
パーティーというのは、もちろん近々にある晴臣の誕生日をお祝いするパーティーのことだ。日も迫っていることだし、なにしろ屋敷の主の祝の会だ。怠ることは許されなくて、使用人みんなが完璧なものとしたいと思っている。
だから、その相談と言われてしまうと断りきれない。咄嗟に晴臣を見れば、偶然にも視線が合って。大丈夫だよ、というとうに晴臣は目を細める。
「行っておいでよ。……ねえねえ、悟を貸すからには盛大に祝ってよ!」
「もちろんですよ、晴臣様! 俺たち凄く頑張ってますから、期待しておいてくださいね!」
「お、言うね〜。また俺に余計なこと言うなってメイドたちに怒られるよ?」
「晴臣様……っ」
くすくす、と使用人と陽気に話す晴臣に、悟は戸惑いの声を掛ける。確かに、パーティーの件も重要だ。けど、せっかく晴臣の気遣いで誘ってもらったのに。
すると、晴臣は安心させようと悟の手をゆっくり握った。
「気にしないで。一緒にお茶なんていつでも出来るでしょ? 悟もさ……今、一緒にいれない分、パーティーで取り返してよ」
「……はいっ」
そうして、パーティー当日を迎えることになる。
準備もギリギリで、晴臣と話せる時間はほとんど作れなかったが、晴臣の言葉もあって悟は作業に集中出来た。
あとは精一杯、晴臣を祝うだけだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
90 / 314