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パーティーは大広間で行われる。その用意は出来ていて、使用人やメイドたちも今はそこで待機している状態だ。
対する悟は晴臣の部屋に赴いていた。晴臣を大広間まで案内するためである。
「ねえ、やっぱ白の羽織りって目立ちすぎじゃない?」
「そうですか? よくお似合いですよ」
晴臣が少し不満げにしている白の羽織りは、誕生日パーティーのための特別なものだ。生地は白地に裾に向かってくに連れて藍色のグラデーションになっている。そこに金の刺繍が施されており、とても雅で煌びやかなものだった。
綺麗で頬を緩ませる悟を、晴臣はジト目で見つめる。
「……本当にそう思ってる?」
「もちろん。晴臣様がお召になる着物はどれもお似合いですが、この着物が一番好きかもしれません」
「そう?」
だが、悟がなんの躊躇いもなく率直な感想を即答するものだから、逆に照れてしまう次第であった。
「どうぞこちらへ」
晴臣の着替えが終わって、大広間へと案内する。
扉の前に到着すれば、中から賑わっている声が聞こえてきて。みんな楽しんでそうだね、と晴臣は幸せそうに笑っていた。
こういう表情をずっと見ていたいな、と悟は思う。なんせ晴臣に一番似合うのは笑顔だから。
「悟。ここを開ける前にちょっと」
「いかがされましたか?」
ドアノブに手を乗せると、晴臣がその腕を掴んで止められる。そうは言っても、晴臣はこの先を言うべきなのか迷っているようだった。
どうしたものか、と悟が小首を傾げれば、晴臣はその様子を見ていて苦笑気味に話す。
「……このパーティーが終わったら二人で会いたいんだ」
「晴臣様……」
情けないことにね、と晴臣が続ける。
「なんだかんだ悟がそばにいなくて寂しかったから。時間はどうなるかわからないけど、少しだけでも」
「かしこまりました。私も晴臣様と二人で会いたいです」
寂しかった。会いたい。その気持ちは悟も一緒だった。
晴臣の専属としてほとんど晴臣についていた悟。だから、離れている時間が長いと自然と違和感を感じて。
あの時、出来なかったティータイムの続きをしたい。たわいもない話をして、ゆっくりと過ごせればいいのに。番となって関係が崩れたわけではないけど、すれ違ってばかりいたから。
「じゃあ、約束ね」
「はい……」
頬同士を擦りあってキスを交わす。
「晴臣様、お誕生日おめでとうございます。私たち屋敷の者から、ささやかなるプレゼントでございます。本日はお楽しみくださいませ」
そして、悟は晴臣に向かって一礼をした後、大広間へ続く扉を開けた。
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