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しばらく時間が経って、お待ちかねのバースデーケーキが用意された。悟はシェフと一緒にバースデーケーキの乗ったワゴンを押して、大広間の中心あたりに持っていく。
ケーキのデザインは以前話していた通り、ショートケーキをベースにたくさんのフルーツを花の形にしてトッピングされている。
「わ、凄いな……また凝ったのを用意したね」
「こういうのは作る機会が少ないので、ここぞとばかりにですよ」
晴臣が感嘆としていると、シェフは笑って対応をしていた。
「美結ちゃん、どこ食べるー?」
「いちごー!」
苺ね、と晴臣はナイフをとって、手際良く切り分けていく。苺のところを切るとフォークを使って皿に乗せて。
「はい、どーぞ」
「ありがとー!」
美結に渡せばキラキラと宝石のような瞳で、ケーキを見つめていて。母親が良かったねー、と頭を撫でていた。
そして、晴臣は再びナイフに持ちかえて、いまだワゴンに手をかけている悟を見た。
「次は……悟! どこ食べる?」
「え、私……ですか?」
まさか指名されるとは思っていなかった悟は目を見開く。
驚きで呆然と立っていると、こっちと晴臣が手招きして。すると、状況を察した周りが背中を押して、気づけば晴臣の隣に立っていた。
「そう、その私。料理いっぱいあるんだから、ずっと突っ立ってないで少しは食べるの手伝いなさい」
「か、かしこまりました……」
「で、どこがいるの?」
そう言われて、悟はケーキをちらりと見る。そしたら、ある一点を見つけて頬を染めた。
「じゃあ、林檎のところを……」
「林檎好きなんだ? そういえば初めて知ったかも……はい、あーん」
「えっ? あ……むっ!」
こんなところで、そのようなこと──!
と、思っているうちに、口の中が甘さで満たされていた。柔らかいスポンジに、なめらかな生クリーム。その中にシャリっと林檎の感触があって、ほのかにその香りが口内に広がっていく。
美味しい……。
もくもくと口を動かしていると、晴臣がふわりと笑った。
「他にも美味しいのあるから食べてね?」
そして、悟の口端についたクリームを指で掬いとると、そのまま自分の口へ持っていく。
ペロリと舐める仕草に、悟の顔は一気に真っ赤になった。晴臣は何事もないようにしているが、周りから煽られて悟のほうは耳まで真っ赤に染まる。
「はい。じゃあ、次……咲良ちゃんケーキ食べる?」
「……いらない。残ったら食べる」
「ええ、そんなこと言わずにさ……どこ食べる、どこ食べる?」
そうやって晴臣は一人一人ケーキを配っていった。
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