アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
93
-
晴臣が一通りケーキを配り終わって、次はこちらから晴臣へ花束を渡す番となった。
悟は小さな花束を晴臣へ渡す。小さな花束と言っても、包み紙とリボンのラッピングが豪華なだけでスカスカの中身を見ると、まだ花束と言えるような代物ではないのかもしれない。
「晴臣様。これから私たちから一本ずつお花をプレゼントしていきます。今は小さなものですが、これからそれを私たちで大きな花束にしていきたいと思います」
「へえ、可愛い……これ咲良ちゃんの?」
「そうですよ。これから渡していく花もそうです」
晴臣は顔を綻ばせて、小さな花束の匂いを嗅いでいた。
「……悟は? もうこれで終わり?」
「いえ、私もありますよ……最後になってしまったのですが」
そう言って、悟はこっそり持っていた一輪の花をちらりと見せる。すると、安堵したのか晴臣がくすくすと笑いだして。
「そっか、良かった。君に辿り着くまで時間かかっちゃうけど、待ってて」
「いつでもお待ちしております。では、まず始めに玄関ホールへ向かってください」
「うん、いってくる」
そのままの笑顔で、晴臣はこの場を出発した。対して、悟はその背中を見守る。先程の眩しい笑顔をこの目に焼きつけて。
こうして、晴臣の花の受け渡しが開始された。
みんな屋敷の色んな場所に散らばっていて、その花たちを晴臣が拾っていく。そして、そこで教えられた次の場所へ晴臣が歩んでの繰り返しだ。それぞれ思い入れのある場所にいて、悟も大広間からその場所へ移動を開始した。
悟の思い入れのある場所といえば、やはり晴臣の部屋だった。晴臣とたくさんの時間を共有してきた場所。喜びや苦しみ、幸せ、絶望。様々な感情をここで生み出されてきた。
悟は部屋の奥の窓へ向かう。そこで景色を見ながら晴臣を待つことにした。
てっぺんにあった日が落ち始めて、窓から夕焼けの紅が差していた頃。その時はようやく訪れた。
「やっぱりここだったんだ」
晴臣は大きな花束を抱えて、部屋の扉を開ける。
無造作に挿された花束。流石に綺麗とは言えないものになってしまっていたが、晴臣はその愛の詰まった花束をとても大事そうに抱えていた。
そんな晴臣を見て悟は今すぐ抱き締めたい衝動に駆られるが、そこはグッと我慢して晴臣を出迎える。
「おかえりなさいませ、晴臣様」
「うん、ただいま。待たせたね」
その代わりに晴臣から悟の頬へ擦り寄ってきて、頬同士のキスをプレゼントされた。
「ふふ。あっという間でした」
「あれ、本当に? 悟に待ちくたびれたって言わせようと思って、ゆっくり歩いてきたのに」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
94 / 314