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「……でも、ごめんね。叶えてあげられなくて」
晴臣は、絡んだ指を愛おしそうに見ていた。動く範囲内でゆっくり悟の手を弄って。忘れないように、丁寧に。
その様子を見て悟も手を動かす。甘く絡む指は、お互いに恋をして愛し合っているかのようで、その温かさに悟の表情が少し和らいだ。
「番になったのに、俺は何もしてやれなかった。結婚式とか挙げてみたかったな……それだけじゃなくて、悟との子供とか……」
晴臣の声が途切れた。
これは、あくまで願いごとにすぎない。晴臣は出来ないことをわかっていた。この身体で悟を幸せに導けるなど──。
晴臣はニコリと笑う。その瞳からは一筋の涙が伝っていた。
「……見たかったんだけどな。絶対可愛いよ」
頭の中に広がる幸せな世界。
何度、想像したことだろうか。その世界に行けたら、と何度思ったことだろうか。
晴臣は涙を零しながら笑っていると、ふふっと悟の笑う声が聞こえてくる。
「可愛がる晴臣様が目に見えますね」
今日の誕生日パーティーの様子を見ていれば、それは簡単に想像出来る。美結に構う晴臣は可愛らしいものだった。もし子供がいたらそうなんだろうな、と悟の胸がほっこりしたものだ。
きっと親バカで良い父になるのだろう。悟の頭にもたくさん思い浮かべるものがあって、そこに幸せを感じて笑いが止まらなかった。
「それはもちろんだよ。それを悟がずっと眺めてくれていて……素敵な家庭でしょ?」
「ええ、そうですね。とても素敵です」
不思議だ。晴臣と話していると、心が温かくなる。
以前、晴臣に自分といると元気でいれる、どんな魔法をかけたのか、と聞かれたことがあったが、まさしくこれがそのことなんだと理解した。晴臣の魔法にかかっている。いったい、どんな魔法をかけているのだろうか。
すると、晴臣は悟を見て再確認したようで。
「……やっぱり悟は笑った顔が一番可愛い。会った時にも言ったけど、君を見ていると守ってあげたいなって思っちゃう」
「その笑顔にしてくれるのは晴臣様ですよ」
「はは。本当に悟には参っちゃうな」
しかし、すぐさま悟が上を行く発言をして苦笑する。
愛されてる。この上なく嬉しいことだ。でも、それは時に傷口に変わる。愚かなことだ、と晴臣は思った。
「悟……後ろを向いてくれる?」
「?」
「項に、番の証に触りたいんだ……」
悟は一瞬恐怖を見せたが、晴臣を見やればすぐに心は決まった。晴臣に背中を向けて襟をめくる。そして、晴臣が触れやすいよう、腰を落とした。
白い肌にくっきりついた噛み跡。薄れることなく、目立っている。
晴臣はその場所へ指先を滑らせた。
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