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カッコイイ背中とスリッパ
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うるさいくらい部屋に響いてるはずの女の声が耳に入らない。
瞳に反射している自分の顔が気分を害すほど酷いもので、彼の瞳を見つめれば見つめるほど腹の中で疼く不快感は増していくのに、蛇に見つめられているかのように目が離せないのである。
彼に舌を抑えられ、飲み込めない唾液が口端からこぼれ落ちる。だらしのない姿を見られていると思うと悔しさだけではなく、なぜか感覚が敏感になっていく。
腿や臀部に埋めたままの指に溶けてしまいそうなほど熱い液体が伝う。
その液体は幹から溢れていた。
彼の瞳を見つめたまま果ててしまっていたのだ。
しかし一向に満足感がない。そのままゆるゆると上下と出し入れの動きを続ける。
舌を太い親指で押さえつけられたまま、残りの指で顎を持ち上げられる。
薄茶の瞳が視界から消えたと思うと、首元から口端にかけて、しっとりとした熱く柔らかいもので撫でられていた。
口端から零れた液体が丁寧にすくい取られていく。
そして口端まで辿り着いたそれが、舌が、口内に割り込まれた。
そんなふうに優しく接せられたものだから、唇を離された時の刺さるような目と狼が乗り移ったかのようなその後の激しい行為は以前にも増して恐ろしいものであった…。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
シャワー室の開く音で正気に返る。
ぼうっとする目で音のした方を見ると、着替えて部屋から出る支度をする要がいた。
上裸でタオルを首にかけたままの要の後ろ姿は普段とは、どこかちがう。
なんというか、男らしくて、逞しい。
背筋と僧帽筋は薄らと浮き上がり、背骨の窪みを引き立たせている。さすがヤンキーしてただけのことはある。
今も鍛えているのだろうか。
そしてふとおもってしまった。
なんか、かっこ…
「おい」
「わっ、」
いきなり声をかけられびくつく。
「お前まだぼーっとしてんの。もう12時近い。
補導されないようにさっさと帰れよ。」
部屋にかけてある時計は11:49を指していた。
「ホテル代、そこに置いておいたから。あとお前のための30分の延長代金もな。さっさと支度しろ。」
要がベッド横のサイドテーブルを指さす。
視線を写すと数枚の1000円札と小銭が置いてあった。
「お、おー。ありが…」
「あ、楽しませて貰ったよ。ほんとに『ミカちゃん』みたいに可愛く鳴いてたね。俺の“目”見ながら。」
「は?ミカちゃん??」
羞恥を堪えながら聞き返すと、何やらスマホを弄りながら要が答え返す。
「さっきのAV女優だよ。ほら、そっくり。」
要がスマホの画面を掲げる。
さっき画面で見た女の子。そして要が指をフリップする。
次の写真。目を凝らして見る。
ミカちゃん?…いや。
写ってるのは、、紛れもなく俺、のだらしない、、。。
「っっ~~~!!ふざけんな!!消せ!!!」
「あはは、嫌だ。じゃあね。」
荷物を持ち、さっさと部屋を出てしまった要。
追いかけようと思うも、全裸の七海は外に出られないので
閉まっていくドアにスリッパを投げつけることしか出来なかった。
それからシャワーを浴び、ホテルを出た。
本当に延長代までサイドテーブルに乗っていた。
優しいのか優しくないのか、俺が嫌いなのか嫌いじゃないのか分からないやつだ。
それよりまた弱みを握られてしまった。
写真なんていつ撮ったんだろう。全然気が付かなかった。
俺はいつまで性奴隷を続ければいいのだろうか。
どこかでこの行為に喜びを感じ始めている自分が生まれている気がして、嫌でたまらない。
彼からにじみ出る俺への嫌悪感も刺さるような視線も分かっているのに。
それでもいつか彼を好いてしまいそうで怖い。
そして気になることがある。
悲しそうな目。
行為の途中で時折見せる彼の曇ったような表情が、気がかりなのだ。
何となく、大切な“あの人”が消えてしまった時の昔の自分と被って。
右手にゲームセンターの前にたむろしている若者と警察官が見えた。
七海はそれを横目に帰り足を早めたのだった。
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