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次の機会に…
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「え、あの…いや…」
相手からこんな事を告げられてやんわり断ろうと思っても相手は客、そう簡単にいくわけもない。
すると、ふわっと彼に笑いかけられた。
そして予想もしていなかった一言。
「じゃあ、それはまた今度にでも頼もうかな。
明日仕事で朝早いし、まだ、心構え出来てないでしょ?」
「あ、でも…」
「…お金を貰ってる?」
「え、…」
ドンピシャ。
お金を貰っているから、俺はあいつに従わなきゃいけない
…とも思ったでしょ?」
「…」
「当たってるかな?」
俺は無言のまま頷いた。
当たってる。
反論の余地もない。でも、だからってここで引き下がるのもなんか申し訳ない気がした。
すると彼はバッグを持ち上げ、部屋のドアの方へと向かっていく。
「じゃあ、また次の機会に」
進める足を躊躇することなく踏み込み、ドアの方へと歩んでいく。
このままでは彼が帰ってしまう。
何か、何か言えることはないのか。
そこでふと思い当たる。あれを言えば彼はそんなに気を張らなくてもいいのではないかと。
せめてでも、…
羞恥心と葛藤しつつも勢いで口を開く。
「あ、あの!」
「ん?」
「俺、…処女じゃないですから。1回だけしか経験が無いってだけで、だから、次なら覚悟を決めておくので…
そのっ…」
「その?」
「桐崎さんと、…雅さんと体を繋げられます」
彼は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに口元をほころばせる。
「じゃあ、次回楽しみにしてるね。」
そしてドアを開け、手を振って出ていこうとした。
その矢先、なにかに気がついたような表情を見せ、ドアを再び放つ。そうしてバッグをゴソゴソといじると中から一枚の紙切れを取り出した。
「これ、俺のプライベート用の名刺。覚悟が決まったらいつでもかけてきて。」
「あ、ありがとうございます」
すると一歩近づいて耳元でそっと、溶けそうな声で、
優しくつぶやかれた。
「楽しみにしてるから、」
恥ずかしさに目線を下に落とすと、油断しきっていた頬に優しく一瞬唇を添わせてきた。
そうして、再び部屋を出てドアの隙間から顔を覗かせ、
「気をつけて帰るんだよ」とだけ言うと部屋を去ってしまった。
彼がいなくなって部屋のベッドに腰を下ろす。
「かっこいい人だな…」
今までの自分の客にはいないタイプだ。
かっこよくて、自己的な欲が少なくて、しつこくない。
「…惚れた、かも、」
つぶやいてからいやいやと自分を制すために首を振る。
俺は客とやったとしても、恋に落ちてはいけない。
(いや、そもそも客っていうのもあるけど、
雅さん男だし!!…)
もし恋に落ちていたとしても、雅さんだけでなく、要にも似たような感情を抱いたのだ。
「俺、…惚れやすい、のかな…?つーか、雅さんのことも要のことも、俺、何も知らない…
…それにもし、好きだとしたら…これって二股じゃ…いや、そもそも好きなのかもわかんないし、でも…」
要より断然優しい。
胸がもやもやする。
毒の霧のようにもやもやして、俺の胸を締め付けてくる。
「シャワー、浴びて帰ろ」
すべて洗い流してしまおう。
この感情も、要との出来事も雅さんのことも。
シャワールームに足を踏み入れた。
この気持ちに気づいてしまいたくないから。
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