アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
51
-
俺が雅の上から退くと、ゆっくりと身体を横向きに寝転がった。
「彰吾」
雅に背を向けながらベタつくモノをティッシュで吹いていたら、聞いたことのないくらい甘い声で名前を呼ばれた。
「なーに、雅ちゃん」
振り返れば、目を細めながら緩く微笑む雅がいた。いつもの貼りつけたような冷たい笑みではないその顔に、思わず心が鷲掴みされる。
「彰吾は不思議だよね」
「......何が?」
「なんだろ......わかんないけど」
「キスしていい?」
「いまさら、そんなことわざわざ聞くの?」
俺の想いで雅の心が少しでも温まったなら、こんなに嬉しいことはない。優しくしたい。圧倒的なこの想いを、どう伝えればいいのだろう。
仰向けになった雅に、触れるだけのキスをする。頬と、目尻と、おでこと......顔中に啄むだけの口づけを繰り返せば、擽ったそうに笑った。
「彰吾......ねぇ、彰吾」
「なーに」
名前を呼ばれるだけで嬉しいなんて。
「彰吾に好きって言われるの、嫌いじゃないの、なんでだろ」
「さあ......なんでだろうね」
「俺も好きって言ったら、彰吾はどう思う?」
「そんなの、嬉しすぎて跳び跳ねると思うけど」
「跳び跳ねるんだ?」
「喜びの舞とかするかもね」
「あはは」
楽しそうな声。穏やかな顔。優しい瞳。きっとこれが本当の雅なんだ。こんなにも、こんなにも可愛くて、美しい。それだけで、俺の喜びは舞どころじゃ収まりきらない。
「彰吾」
けれども、少し悲しげに瞳が揺れた。分かってる。そんなにすぐに人の心は変わらないよね。
「ありがと」
優しい雅の、精一杯の俺への想いが聞けた気がするから、今はそれで十分だった。
「ね......なんか、すごく眠たくなってきた......」
「いいよ、寝ちゃって」
「ナカ、掻き出しといて......」
「仰せのままに」
気高い女王様。いつか俺の、可愛いお姫様にしてみせるから。
すぅっと閉じられた瞼にキスをして、俺はしばらくその美しい寝顔に見とれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
51 / 652