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52【Miyabi】
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彰吾と過ごすのは、とても心地よかった。こんなに穏やかな気持ちでいられるのは何年ぶりだろう......。
でも、いつまでも甘えているわけにはいかなかった。二人で暮らすにはワンルームじゃ狭すぎて、いくら片付けたってこれ以上は迷惑かけられない。
ベッドに寝転がりながらスマホで家を探していると、後ろから手が伸びてきてスマホを奪われた。
「何するの」
「そっちこそ、なんで家なんか探してんだよ」
「......だって、ずっとここにいたら窮屈だし。日当たり悪いし、狭いし、汚いし」
そんなこと言いたいわけじゃなかった。だけどなんとなく素直になれなくて、目をそらしてしまう。
「じゃあ、二人で広いとこ引っ越す?」
ベッドサイドに座った彰吾が、上半身を傾けて俺の背中に張りつくように抱きしめてきた。こうされると、どうしようもなくドキドキしてしまう。俺より少し体温の高い彰吾の熱が心地よくて、離れたくないと思ってしまう。
「......夕飯、俺、作る」
「雅ちゃんが?」
「ずっと世話になってるの、居心地悪い」
「部屋片付けてくれただけでも十分なのに。っていうか、雅ちゃんが俺の腕の中にいてくれるだけで十分すぎるくらい幸せなんだから」
優しすぎるくらい、甘ったるすぎるくらい、俺を好いてくれている。心の中が温かくて、幸せで涙が出そうになるのを、顔を背けて誤魔化した。
俺が好きって言ったら、喜びの舞を踊るらしい。それを想像したら、なんだかまた笑えてきた。
「何笑ってんの?」
訝しげに顔を覗き込んできたから、不意打ちでキスをしてみた。
「ねぇ、何食べたい?」
「まじで、無理しなくていいって」
「毎日コンビニ弁当とか、そっちのがキツいし。俺、料理はそこそこなんでも作れるよ?」
「うそ......手が荒れるから家事なんてしなさそうなのに......あ、でも掃除とかめっちゃ上手いよね。雅ちゃんて意外と主婦力高い?」
「早くに母さん死んじゃったから。父さんは昔はバリバリの仕事人間で、家事なんて一切できなかったし......弟も、いたしね」
「......へぇ、弟。雅ちゃんの弟なら、さぞかし可愛いんだろうな」
「いや......俺は母親似だけど、弟は父親似で、背も高くてガタイもいいから、一緒にいても兄弟って見られたことがないくらい、似てないよ」
そういえば、初めてだった。他人に弟のことを話すのは。龍弥には迷惑かけたくなくて、父にも絶対に龍弥のことは話すなと言ってあるから、たぶん業界の人で俺に兄弟がいることは誰も知らないはずだった。
「弟、いくつ離れてるの?」
「......三つ」
「じゃあ、19か。大学生?」
「彰吾、お願い、誰にも言わないで」
俺は勢いよく身体を起こすと、彰吾に掴みかかる勢いで叫んでしまった。だめだった。龍弥のことになると、冷静ではいられない。
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