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なんで口が滑ってしまったんだろう。母がいないことは話したことあっても、龍弥のことは絶対に言わなかったのに。
「龍弥は普通だから、全然、ノーマルだから、だから......っ」
「ん、言わないから、安心して」
彰吾の優しい手が、俺の輪郭を撫でた。
「俺、一人っ子だったから羨ましいな。弟想いで美人の兄ちゃんとか」
「......全然、弟想いとかじゃ、ない......」
迷惑しか、かけなかった。弟にあんな顔をされる兄なんて、兄失格だ。どんなに大切に思ったって、これまでどれだけ守ってきていたって、あの瞬間全てを壊したのは自分自身だった。
「そうだ、雅ちゃん。俺、肉じゃが食べたいなー」
突然、パッと明るい口調で彰吾が言った。
「肉じゃがとー、味噌汁とー」
「なに、それ。すごい質素」
「肉じゃがって質素?なんか、手料理の代表って感じじゃね?」
また、後ろから抱きしめられた。彰吾は、嫌になるくらい優しい。演じることなんて馴れてたはずの俺の皮を易々と剥がして、優しく包み込んでくれる。俺が聞かれたくないことは聞かないでいてくれるし、見られたくない姿は見ないでいてくれる。後ろに感じる温もりに、強張っていた身体の力が抜けていくのを感じた。
「......いいよ。じゃあ、今夜は肉じゃが作る」
「やった!」
「あとで一緒に買い物行く?」
「行く......!やばい、何これ、新婚さんみたい!すっげー感動!!」
「新婚だもん」
「えっ?」
身体を捩って、首に腕を絡めた。それから、自ら口づけて、唇を触れ合わせたまま会話する。
「押しかけ女房、的な?」
「まじで......?」
「嫌って言っても、もう出てかないから」
「......うん」
「俺のこと、一生愛してくれるんでしょ?」
「うん。誓うよ」
「......一回しか言わないから」
「うん」
「彰吾が、好き」
言い終わると同時に、強く抱きしめられた。
これでいい。
狭い檻の中で、優しいこの男に全てを委ねようと、俺は決意した。
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