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それから食後のコーヒーを入れてくれた。今までは絶対に豆から挽いていたけど、彰吾の入れてくれるインスタントコーヒーは、何故だか悪くなかった。壁に凭れて座る彰吾の足の間に座って、彰吾に背中を委ねる。髪の毛をつまんだり撫でたりしてくるのも、彰吾なら嫌な気はしなかった。
「誰かに作るのは久しぶりだった。......笑いながら一緒に食べるのは、もっと久しぶりだった」
「そうなんだ。はは、確かに、東雲さんと雅ちゃんがセックスしてるのは想像できんのに、親子の会話しながら飯食ってるところって想像できねぇ」
「あの人ほんと下品だから、絶対一緒にごはん食べたくない」
「どんな親子だよ」
ほんとに。けして仲が悪いわけじゃないけれど、ろくでもない親子ではあると思う。そんなだから、例え隠していても、龍弥には相当居心地が悪かったに違いない。
「......弟にさ、最近、バレちゃって」
きっと、俺のことは彰吾が受け止めてくれる。そう思ったら、言葉がポロポロ出てしまった。
「俺が、こういう仕事してることとか、父さんとの関係とか」
「うん」
「当然なんだけど、すっごい引かれちゃって」
「......」
「でも、それより前から、もうほとんど会話とかなくて」
「なんで?」
「ずっと、避けてたから」
「雅ちゃんが?」
「ん......だって、嫌われたくなかったんだ......じゃあ、こんな仕事するなって話なんだけどね」
「......雅の仕事は、別に水商売とか、体売ってるようなのとは違うじゃん。東雲さんの個展のやつとか、立派な芸術だろ」
「一般人は、フェティッシュイベント見て、芸術的な仕事だとは思わないよ。......それに、体売ってるわけではなくても、父親とでもセックスできる男なんて、普通受け入れられるわけないでしょ」
「......」
「自分の兄貴が縛られて、男に愛撫されて悦んでるなんて、おぞましかっただろうね」
「雅......」
「優しい弟がさ、すんごい目で俺を見て、暴言吐いたのなんて初めて見た。そうさせたのは俺なんだよね......ほんと、自分が嫌になる......」
あの日浴びせられた言葉を思い出すだけで背筋が凍る。そして、あの表情。今はまた、笑っているだろうか。俺がいなくなって清々したと笑ってくれているだろうか。
「唇、噛まないで」
俺は知らず知らずのうちに、思い切り唇を噛んでいたらしい。彰吾の指が俺の唇に触れて、歯列を割って咥内に入ってきた。
「噛むなら俺の指にしとけ」
「......なんで」
「雅ちゃんの綺麗な唇に傷がつくのが嫌だから」
どうして
「どうして、彰吾はそんなに俺のこと大事にしてくれるの」
唾液に濡れた指先が唇を撫でていく。
「好きだから」
「なんで」
「なんでかな。でも、一目惚れだった」
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