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「そこで泣いちゃうのは、狡いなぁ......」
蓬莱さんの温かい手が、涙を拭ってくれた。それでも止まらない涙が、蓬莱さんの手をどんどん濡らしていく。
「いいんだよ、こんな指輪、すぐに金に替えてくれても。結婚だけして、財産食い潰してくれても、何も言わないよ」
「そんなこと......っ」
「他の誰かを想っていてもいいし、彰吾との関係も今のままで良い」
「そんな......っ」
「それが、できないんだよね、本当の雅くんは」
幼子を慰めるように、優しく抱きしめられて背中を撫でられる。
「あんなに気高くわがままに振る舞っているのに、本当のきみはこんなに優しくて弱い。老い先短いジジイと養子縁組組んで、一生遊んで暮らせるだけの金が手に入る。普通、断らないよ、こんな話。なんなら、保険もかけとこうか?」
「やめて」
「きみと夫婦になって、一日ベッドの上でハネムーンを過ごさせてくれたら、翌日すぐに死んだっていいよ」
「やめて、蓬莱さん、やめて」
「それくらい、きみが欲しくて堪らない」
強く抱きしめられて、どうしようもなくて涙が止まらなかった。どうして、応えられないんだろう。どうして、俺はいつもいつも役立たずなんだろう。
「もう泣かないで......あんまり泣いてたら、虐めてしまいたくなるよ」
「虐めて......蓬莱さんの好きにして、俺のこと壊して......」
「じゃあ、受け取ってくれる?」
「......っ、ひ、ぅ、ごめん、なさい、ごめんなさい......っ」
どうして、頷くことができないんだろう。
痛みや苦しみや快楽はいくらでも受け止められるのに、愛だけはどうしていいかわからなくなる。
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