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87【Shogo】
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正直、蓬莱さんの告白には驚いた。あの時、すごすごとバスルームへ向かったものの、やっぱり中の二人が気になって、扉の隙間を開けて様子を窺っていた俺は、蓬莱さんの突然のプロポーズに心底驚いた。雅なら絶対俺なんかより蓬莱さんを取る、そう思ったのに、予想に反して戸惑い泣く雅を見て、さらに驚いた。
雅は優しい。普段はツンツンしているけど、本当は不器用で感情を表に出すのが苦手なのも知っていた。なんで俺の側にいてくれるんだろう、と思った時、始まりは勢いだったにしても付き合い出して、俺を捨てるのを悪いと思って気づかってくれているのかとも思ったけれど、バイトから帰ってきて俺の枕を抱えるようにして眠っている姿を見たり、朝起きたら俺の好きなサンドイッチを作ってくれていたりして、もしかして、けっこう本気で両想いなんじゃないかと、思ったりも、してみたりして。
「ただいまー」
ドアを開けると、キッチンに向かう雅の姿が見えた。
「おかえり」
チラッとだけ俺を振り返るだけでにこりともしない。でも、ただいまと言っておかえりと言ってもらえるのが嬉しかった。
「シチュー?」
部屋の中は暖かくて、美味しそうなシチューの匂いが立ち込めていた。
「うん。人参たっぷり」
「ええ......」
そこで初めて、クスクス笑う顔を見る。
「肉もいっぱい入れたから。もう食べる?」
小さい折り畳み式の机を広げれば、シチューと彩りのいいサラダ、フランスパンが並べられた。
「人参嫌いだって言ってんじゃん......雅ちゃんの鬼畜......」
俺の分のシチューには、これでもかと人参が盛られていた。もはやじゃがいもと肉が飾りみたいに見える。
「好き嫌いしない」
「全部食べたらご褒美くれる?」
「さあ、どうかな」
出されたものは残さない貧乏性なので、仕方なく人参を一つ食べてみるが、やっぱりどうしても美味しくない。
「雅ちゃんのシチューは美味しいのに......やっぱり人参は旨くない」
それでも、2個、3個と食べていると、正面から伸びてきた手に頭を撫でられた。
「いいこ」
「うう......」
恨みがましく睨み付ければ、眩しいくらいに綺麗に笑う雅と目が合う。雅はそれから、自分の皿から肉をすくって俺の皿に移すと、今度は俺の皿に残っていた人参をパクパクと食べていった。
「......ほんと、雅ちゃんって優しいよね」
鬼畜だけど、最終的にはいつだって優しい。そういうところが、可愛くて仕方がない。
「雅ちゃん、ちゅーしていい?」
「だめ、食事中」
「食べ終わったら?」
「......いいよ」
シチューを食べる口元に目がいってしまう。飯を食ってるだけで、どうしてこんなにもエロく見えるんだろう。そして、口の端についたシチューを指先で拭って、わざとらしくチュッと音を立てて舐める姿に、思わず生唾を飲む。
「いいこで全部食べたら、デザートあげる」
ああもう、遊びでも同情でもなんでもいい。妖艶に笑うその姿に脳ミソがどろどろに溶かされて、雅の前では理性も思考も意味がないと改めて思い知らされた。
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