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第五話~リコの一日
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今日は僕の大事な日。三日に一度の大事な日。
コンコンコンッ
ノイの部屋の扉を叩く。真っ白で、汚れ一つない綺麗な扉に、金色のノブが光ってる。
「ノイ、おは、よ」
ノイやエネは僕よりしっかりしてるから、普通に考えれば僕がこんな風に急かすのはおかしいんだけれど、今日は三日に一度の大事な日だから、一秒でも長く欲しい。
「…ん」
扉の向こうから、特徴的な間を取ってか細い声が聞こえた。僕はぺったりと扉に耳を付ける。
「…シセル、シセル」
「ん…ぁ?」
「…ふふ」
微かに笑い声が聞こえたかと思うと、シセルの声も聞こえなくなって、代わりに、聞き覚えのある水の音がした。僕は慌てて扉を叩く。
「の、ノイっ、駄目だ、よっ、僕っ、今日は、僕っ」
「…ん、分かってるよ」
扉の向こうの水音が止んで、布が擦れる音、そして軽い足音が聞こえた。
「…リコ、入っておいで」
そう言われて、僕は金色のノブに手を伸ばす。ひんやりとしたノブを下げて扉を開くと、一番に目に入ったのは赤黒い革張りのソファーにゆったりと座って、コップに入った冷たそうな水を飲むノイの姿。僕を目で捉えて、視線をそのまま脇に流した。
促されるままに目でシセルを探すと、二つある大きなベッドの内手前のベッドがところどころ赤く染まっていて、その奥のベッドにようやく、姿を見つけることが出来た。
「しせ、るっ、おはよっ」
「んぁ?…ん」
なんだか少し元気がなさそうだ。僕は速足で二つのベッドを回り込み、寝惚け眼でがじがじと頭を掻いているシセルの元に行く。ふと、隣のベッドからお酒の匂いがした。
「おさ、け、飲んだ、の?」
「あー…まぁ、な」
「…ふふ」
ノイがまた笑う。前にもこんな状態のシセルを見たことが有った。お尻からお酒を入れられて、気絶するまでセックスしたら、こうなる。
「お水、飲む?」
「あ、ん、そうな、欲しい」
「ノイっ」
「…良いよ」
「ありが、と」
僕は部屋の隅にある戸棚からコップを一つ取り出して、テーブルの上に置いてあったガラスのピッチャーを手に取る。中に入っている水を注ぐと、コップ越しにその冷たさを感じた。
また早足でシセルの元に戻る。
「はい、おみ、ず」
「おう、さんきゅ」
僕が水を手渡すとシセルはそう言って一口口に含んだ。うがいをする時みたいに口を軽く動かして、ようやく喉仏を上下させる。そこから更にコップを口に付けて、ごくごくと呑み始めた。
「おい、し?」
飲み切ったところでそう声を掛けると、口元を軽く拭って小さく頷く。
「もっと、飲む?」
シセルが、優しげに笑う。笑ってくれる。僕の為に、僕に、笑ってくれた。
「もういいよ。ありがとな」
「ぇへへ、ふふ、ん、ふへ、へへ」
ついつい笑うのを堪えられなくて下を向いたら、頭に温かいものが触れて、髪の毛がさらさらとかき混ぜられた。もっと、もっとしてほしいな。
「…僕の部屋でいちゃつくんなら、参加していい?」
ノイの機嫌の悪くなった時の、抑揚が無くなった声が聞こえて、僕は慌てて顔をあげる。
「も、もうしない、よ。ん、ふふ、じゃあ、えと、朝ごはん、たべ、いこ」
「…ん」
ノイは、そうとだけ言って部屋から出て行く。大きく扉を開いて、早く出て行けって言うみたいに。それを見て、シセルもベッドから立ち上がった。
「お前らな、喧嘩すんなよ。どうせ俺が八つ当たりされんだから」
「し、しない、よ、僕は、しない、よ」
「あー…まあ、喧嘩はすんな。飯いくぞ」
「あ、うんっ」
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