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#3
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「…僕に関係してる事?」
ノイがそう問いかける。
詳しくは知らないけど、接客とは別に、逆にノイの方がディミーさんから何かを不定期で買い付けていると、前に聞いたことが有る。少年は、首を振った。
「いえ、違います。もっと言えばディミー氏は優良顧客に該当する方で、今回の悶着に関してもあくまで被害者です。後日改めてお詫びを、とお伝えしてありますので、その点に関しては後でまたお伺いします」
つらつらと説明する少年を見ながら、僕は頑張って思い出してみる。確か、僕も一度相手をしたことが有ったと思う。優しい人だったから、よく覚えている。
この娼館が大きくなって直ぐの事。何でか僕は凄く高いお金でしか買えなかったみたいで、逆に言うと、僕が相手をする人は皆、高いお金を払ってたから、その分当たり前みたいに酷いことをいろいろされたけど、ディミーさんは確か『他の子が皆駄目だったからさぁ』っていう理由だけで、僕を買って、そしてとても、優しくしてくれた。
無茶な要求をすることも無ければ、セックス自体も丁寧で、最後に一緒にお風呂に入って、身体がポッカポカになるまであったまって、頭も、身体も洗って貰って、それにお小遣いもたくさんくれて。指名とかをしない人らしくて、実際僕もそれきりディミーさんに買われたことは無いけど、たまに、僕の班の子がディミーさんに当たって喜んでたっけ。
「うん。分かった。なら何が問題?」
ディミーさんについて思い出していると、エネがそう聞いていた。
「お連れの方が、うちの警備体制について一枚噛みたいと」
「どちら様?」
「キリム氏です」
「あっは、また大物が出て来たねぇ」
今度は、僕の知らない人だった。
エネはなんだかよく分かっているようで笑いながらも表情を引き締めていたが、ノイは僕と視線が合うと、何も言わずにコップに口を付けたので、多分知らない。
「二人はどういう関係?」
「ディミー氏が仰るには、キリム氏を社会勉強のために連れて来た、とのことですが、キリム氏は嫌々連れてこられたと仰っていて、まあその、ディミー氏もああいう方ですので、僕はキリム氏の言い分が恐らく正しいのでは、と思っています」
「んー、まあ、だろうね。因みに二人は、キリム氏の事知ってる?」
二人、と言う言葉に疑問を感じて見てみると、シセルは最後のサンドイッチを美味しそうに食べていた。ただ、表情を引き締めたまま。
「シセル、は、知って、るの?」
「んぁ?あー、まあ名前はな、昔っから有名な奴だし」
「…僕も、知らない」
「折角だから、シセルが教えてよ。世間の事なら意外とシセルの方がよく知ってるかもだし」
話を振られたシセルは、僕、ノイ、エネ、そして一応少年の方も見て、再度口を開いた。
「まあ、知ってるっても大した話じゃねぇけど、要は民間軍事組織のトップだよ。十五かそこらの時に自分の身体改造して、警護とか、あ、そうだよほら、昨日話したろ?斡旋所の話。
ああいう所で大口の仕事片っ端からこなして、大金稼いで今度は組織立ち上げて、そんでそっから一年足らずでこの辺一帯の信頼勝ち取った化け物みてぇな組織のトップだって話を、知り合いから冗談交じりで訊いただけだよ、本当かどうかも分からねぇ」
シセルが記憶を辿る為か、こめかみのあたりをトントンと叩くので、それを真似して自分の頭をトントン叩きながら話を聞いていたら、予想外の所から補足が出てきた。
「それ、本当です」
少年だ。
「渡された連絡先は間違いなくシセルさんが仰った組織、立花—たちばな—に繋がる連絡先でしたし、何よりディミー氏が保証すると言って下さっているので、身分は間違いないと思います。その上で、僕はキリム氏に実際会いましたが、正直、ノイさんと同年代か、多少上くらいにしか見えませんでした」
ノイみたいな力持ちが他にもいるんだろうか。僕はそんな下らない事を考えた。
「…ま、相手は分かった。それで、一枚噛みたいって言うのは?」
「はい。例の客がお二人の部屋に乱入した際、キリム氏が問答無用で半殺しにしたので大事には至りませんでしたが。その際に警備体制について、もしよかったらキリム氏の立花と契約を結ばないか、とそうお申し出がありました」
「あぁ」
それは丁度、昨日話し合っていた内容だ。
「どう、する?折角、話、してくれ、てるけ、ど」
「うーん、正直悩みどころだよね。仕事の面で言えば、これほど信頼できる相手は他にない」
「…でも、規模が大きい分立場のバランスが難しい」
「その通り。これは会って話すしかないかもね、キリム氏の事が信用できるかどうかが問題になってくるよ。リコはどう思う?」
突然話を振られて、飲んでいたリンゴジュースを慌てて口から離した。
「あ、ぼ、僕は、んと、キリムさん、に、ボディーガード、してほし、い」
色々考えながら頑張って思ったことを言ってみると、エネは目を丸くして一瞬何かを言おうとしたけど、直ぐにその口を引き絞って、眉根を寄せた。
「…悪くないね」
「確かに。悔しいけど見落としてたよ、うん。しかしまた妙に核心を突くよね」
二人が言っている事はよくわからなかっけど、一応、悪くない意見だったらしいということは分かったのでシセルの方を向くと、僕が言いたいことを分かってくれたみたいだった。
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