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#7
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「────キッドも座りな」
「はい、失礼します」
エネの合図でいつもは立ちっぱなしのキッドが席に着き、ノイが冷たい水の入ったコップを傾けるのと同時に、読んでいた書類を机の中心に滑らせた。
「…切ってよし」
「あ、そう?確認ありがと」
「後でまとめておきます」
「な、何の書類?」
「さっき話してた立花の常連客だよ。一応上客かどうか判断しとかないと、こっちも商売だからね。それで、今ノイが結論を出してくれたから、全員切り捨てる」
「そ、っか。分かった」
机の上に散らばったいくつかの書類を、僕も手元に引き寄せて見て見る。すると、あることに気付いた。
「この、子。僕、知ってる」
「そりゃお客だからね。名前くらい聞いたことあるでしょ」
「違う、よ、んと、班の子、から、あやし、いって、言われて、見にい、った」
僕の言葉に、二人の顔色が変わった。キッドが僕の手元に視線をよこしたので、僕はキッドにおずおずと一枚を抜き取って渡した。
「これは…あぁ、僕も妙だと思ってたんですよ。見てください」
エネがキッドの持った書類に目を通していく横で、ノイがちらりと視線を落とし、直ぐに何かを考え込むように眉根を寄せた。多分、さっき目を通した書類だから、見なくても細かいことは思い出せるんだろう。
「リリー・リックス。フルネーム書くなんて不用心だね、仕事はえーっと…公共施設の清掃員、ね。また随分と高給取りな清掃員だ事で…キッド、接客記録見せて」
「覚えています。初回はエネさんの班の子で、プレイはノーマル、ノーオプション。うちで一番安いプランでした。続けて二回三回と同じようなプランを注文して、最終的にはお三方の全ての班で相手をしてます」
「成程、際どいけど怪しいとも言い切れないか」
「はい。ただその後に一度、フルオプションで二人付け、部屋もスペシャルスウィートを注文しています。それが最後の来店でした」
「誰の班?」
「恐らくその時にリコさんが動かれたのだと思います。僕も、リコさんに告げるべきかどうかという相談をされた記憶がうっすらとありますから」
エネがそこまで聞いて、ノイに話を振った。
「どう思う?」
ノイは視線を戻さずに、部屋の隅を睨んだまま問いかける。
「…キッドが妙だと思ったのは、どうして」
「あ、そうです忘れてました。ここ、見てください」
キッドが、全員に見える位置に書類を置いて、ある一ヵ所を指さす。それは、任意で記載する住所の欄だった。
エネは、ひそめた眉をそのままに書類から目を離すと、大きく背もたれに寄りかかって、独り言を零すように呟いた。
「んー、普通に低所得者の吹き溜まりだよね、このあたり。何が引っ掛かるの?」
「二つ、理由が有ります。まず一つは、何故、書いたのか。先ほどフルネームを書いていた事から察するに、そういう方なのだろうと思いますが、敢えて、指摘しておきます。
その上で二つ目ですが、実はこの区画、少し前に行政上の区画整理で立ち入り禁止になってまして、住所としてはおかしいんです。ただ、町の外観を良くするために住民を追い出すような計画だったので、公ではこのことはあまり知られていません。
つまり、任意の記載欄に住所を書くという行為自体は不用心なんですが、実際書いてある住所は、周到に場所を選んで恐らく偽の住所を記載している様にも見えるんです。
矛盾、していませんか?」
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