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ファイルを握っていた手に自然と力が入って
少し硬い素材のファイルがぎっと変な音を立てた。
美咲のため息が聞こえた。
「櫻ぁ。みつばくんは何も知らないと思うぞ。ほとんど病院にいるから親がなんとでも言い訳できるし、普段いない家のことなんだから親の言うことを信じるしかないだろ。」
そう言われて、それもそうかと思う。
そうであってほしいと思う。
「今日はもう遅いから俺らも寝ようぜ。」
俺の手からすっとファイルを抜き取り鞄へ戻す。
そうだ、時計を見ればもう2時を回っていた。
「今日は悪かったな。おやすみ。」
「いいよ、おやすみ。」
客室に消えていく美咲を見送って、どこかぼうっとしながら寝室へ向かう。
どうもみつばの話を聞いてからモヤモヤとしてしまう。
仕方とない事だとはわかっているけど
いくら家にいなくても、いくら親が言い訳していたとしても、よつばがこんな酷い仕打ちを受けているのに
幸せそうに笑っていることが
俺の中にどろどろとした黒い何かを生み出していく。
寝室へ入れば先程とは打って変わって綺麗な顔で眠りこけてるよつばがいて。
なんだかどろどろしたものが消えていくような気がして
そっと額に唇を寄せた。
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