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時間だけは平等だ。そして無情に進むものでもある。
「2047番、他に希望するものはあるか?」
俺は最後の質問を彼にする。
今まで自分が見ていた彼は、自然体だと思っていた。
部屋で手紙を書いているときも、食事を取るときも。
でも、今なら分かる。
それはただの『仮面の外側』に過ぎなかったのだと。
殺人鬼の仮面を外してしまえば、23歳になったばかりの青年なのに。
彼を殺人鬼にしたのは彼の父であり、そして俺達、世間だ。
視界の奥で2047番はゆっくりと顔を上げた。
困ったように下がる眉が彼を年相応に見せていた。
「………相楽刑務官」
2047番の喉が小さく、動く。
「…抱き締めて、頂けませんか?」
そして彼の言葉に、俺は息を飲んだ。
「すみません、気持ち悪くて」
申し訳なさそうに彼は笑う。
無垢な笑顔を彼は仮面の下で、どれだけ殺してきたのだろうか。
「相楽刑務官にしかこんなこと頼めなくて」
自分を殺し続けた青年。
真実を知って尚、救うことなく罰する。
俺もまた罪人なのかもしれない。
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