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まりあちゃん 6
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チカチカと照らすライトと
冷たい頬に当たる風。
ときどき現れる幽霊や
お化けの悲鳴、
ときどきびっくりするけど、
そんなのどうだってよくなるくらい
手から伝わってくる体温が気になって
隣の様子をちらちらと見てしまう。
杉山君は、僕と同じように
あんまり怖がらずに、
出口を目指しているようだった。
「みなちゃん本当にお化けとか
怖くないんだね。
怖いものなんてなさそう」
なんて言われたけど、
僕が怖いのは
お化けとかじゃなくて
誰かに裏切られたり
誰かがいなくなったりすることだよ。
「杉山君も怖がってないじゃん」
お化け役の人には申し訳ないけど、
演技してまで怖がるのも気が引けて
淡々と迷路のような道を進んでいくのだった。
「俺はだってみなちゃん守らないと」
怖がってる暇なんてないのと
杉山君がはにかんだ。
僕は、本当は男だから
別に守ってもらう立場じゃないけど
小澤君になら守ってもらいたいし、
杉山君が僕を守りたいって気持ちも
なんだか嬉しかった。
出口にときどき出てくるお化けや仕掛けに
びっくりしながらもようやくたどり着くと、
眩しい光が視界を邪魔した。
「言うほど怖くなかったけど
結構迷路みたいで楽しめたね」
手繋ぐきっかけもできたしなんて
杉山君が僕の耳元で言うから
頬が熱くなるのを感じた。
「お、お化け屋敷、でたし、
もう手離してもよくない?」
お化け屋敷出てからも杉山君は
僕の手を離さないというふうに
ぎゅっと握る。
「俺は、もう少しこのままでいたいけど
みなちゃんは、俺と繋ぐの嫌?」
そんな聞き方ずるい。
嫌なんて全然思ってないし、
杉山君と繋ぐことが嫌と言うわけでもない。
だから素直に
首を縦に振ることが出来なかった。
黙っていると、
じゃあこのままで決まりねと
悪戯っぽく杉山君が笑った。
「次どこいく?」
うーん、お化け屋敷はいったし、
ご飯も食べたし、
乗り物はもういいかなぁと考えて
答えを言えずにいると、
「観覧車でものる?」
一応デートだしなんて言ってきた。
本当は、僕と小澤君のデートで
杉山君と乗る予定もなかったなと
ふと思ってしまって
寂しい気持ちになってしまった。
「…杉山君」
顔を上げると、
杉山君が頭を撫でてくれていた。
「俺とのデートは、
小澤君と2人で来る時の練習だよ」
その言葉にはっとした。
僕のためにそんなこと言ってくれて
デートの練習っていえば、
デートじゃなくなるってことだし、
本当はそんなこと言いたくないのなんて
そんな困ったような笑った顔で分かる。
「杉山君…ありがと」
杉山君、優しいな。
こんな辛気臭い顔してちゃダメだ。
そう言ってくれた杉山君のためにも
楽しまなきゃと思う。
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