アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
蔵本湊 8 (修正済)
-
もうそろそろ梅雨だなと
ジメーっとした空気を感じて思う。
僕の髪はそれに応じて
少し湿っぽくて気持ち悪い。
もともと繊維質なため、
水分を含みやすいのが悩みなのだ。
「僕のこのふわふわした髪、
なんとかならないかなぁ……」
前髪をくるくるといじりながら思わず呟き、
じーっとその髪を見つめる。
「なんとかって、
どうにもならないだろ、それ」
後ろから不意打ちのように
声がかけられたので僕は驚いて振り向く。
「なんだ、燿かぁ~。
びっくりさせないでよ」
ほっと笑顔を見せながら
間を見て今日一回目の挨拶をする。
後ろからっていうのは
どうしても小澤君の事、
思い出しちゃうんだよなぁ……。
「悪い悪い。
てゆうかさ、湊は
その髪が似合ってると思うけど」
んー、そうかなぁと相づちを打ち
首をかしげるが、いまいち納得できない。
「あ、山川先輩じゃん」
正門に目を向けると、
山川先輩が立っているが見える。
「山川先輩、確か今日が
挨拶運動の当番日だからだね。
ちなみに僕は明日だよ?」
先輩は何時も完璧だ。
今日も曇りだというのに、
彼だけなぜかキラキラと輝いている気がする。
「へぇ。そういえば、
お前ってあの先輩を見ると
ドキドキするって前言ってなかった?」
いつかだったか山川先輩のことを
燿に話して
憧れだって気づいたんだっけ。
「えっあ……、もうなくなったよっ。
なんか間違いだったみたい」
なんでそんな昔のことを
覚えてるんだろうと思いつつ、
否定をしっかりとする。
「ふぅん、そうなんだ。
まぁ、間違いってよくあるもんな。
好きの中でもいろいろ種類あるからな」
不思議そうな顔をした燿は、
そんなことを言っていた。
校門を横切る時、
山川先輩と目が合った。
山川先輩は相変わらず笑顔で
挨拶をしてくれたけれども、
僕はあの漫画を見られてしまったことから
なんとなく笑顔で挨拶を返せなかった。
山川先輩、
僕のことどう思っているんだろうと
考えながら
燿の他愛もない話に
耳を傾けていたのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 83