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始まりの音 1
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「要先生、セックスの仕方を教えて下さい」
要 茉莉(かなめ まり)は目の前にいる男子学生に、いきなり呼び止められて相談したい事があると言われ、人通りの少ない廊下に連れて来られた。
しかし、その生徒の事は知っていた。
如月 颯人(きさらぎ はやと)、昔よく遊んであげていた。
親の仕事の関係で、人生の殆どが日本にいることが全くなかったため、本当に久し振りの日本に帰って来たときの家のお隣さんだった。
しかし自分が15歳の時に父親の仕事の都合で、また海外に引っ越しをしてから一度も会っていなかった。
そして自分は、颯人の事が好きだった。
ちゃんと恋愛感情で見ていたが颯人は7歳だったし、最後の最後まで自分の気持ちも海外に行く事も言えなかった。
そのまま、別れも言えずに突然颯人の前から消えてしまったのだった。
颯人が今年、ここの高校に入学したのは自分がここの高校の教諭兼、生徒会顧問なので事前に知っていた。
初恋の相手が生徒として来たことに嬉しかったが、同時に後ろめたさもあった。
あの時、『別れ』を言えなかった事だ。
ここの生徒からは、下の名前に“先生”をくっつけて“茉莉先生”だの、“茉莉ちゃん”だのと言われることが多かった。
名前が女性みたいだとよく言われるが、本名だから仕方ない。
颯人にも、8年前は自分の事を『茉莉』と呼ばせていたのに今は呼ばれず他人行儀で、どことなく寂しかった。
「うん?」
だから、聞こえないふりをした。
少し美化し過ぎているのかも知れないが、好きな颯人が昼間の学校に相応しくない言葉を言ったことを、聞かなかったことにしたかった。
が、相手は聞こえなかったのかと思い、さっきより更に大きな声で言った。
「俺にセックスの仕方を、色々と教えて下さい!!」
その声に茉莉は驚いた。
颯人の両肩に手を置き、周りを確認した。
幸い、この廊下は人が本当に通らないらしく、誰もいなかった。
久しぶりの再会で、気持ちが舞い上がっているのか?
それとも、海外に行く事が言えなかった自分への都合の良い解釈をしているのか…。
そのどちらでもない事を、あとにで知る事となる。
「要先生、大丈夫です。この時間は部活棟に大体の生徒も先生も行ってるから…」
こちらの考えている事がわかったらしく、颯人に言われた。
「確かに相談したい事があると言っていたが、極端すぎないかな?」
大人の対応として、やんわり言った。
内心は『どうした?!!颯人がそんな事、言ったら駄目だろ!!』と言いたい。
しかし、当の本人は顔色を変えずにいた。
「要先生、覚えていますか?俺の事」
「…確か昔、近所に住んでた…颯人だよね?」
好きな人を忘れるはずもない。
「はい、そうです」
「えっと…元気してたか?」
「はい」
『もっと気の聞いた事、俺は言えないのか?!』と自分自身にツッコミを入れたくなった。
こんな事で怯んだら駄目だと思い、思いきって聞いた。
「で?さっきのが相談内容かな?」
「はい、セックス教えて下さい」
(そう、はっきり言うなよ…)
どうしたものかと考えていたら、颯人が口を開いた。
「こういう事、誰にも聞けないので…」
(確かに…そうだろうな)
「何で教えて欲しいのか、言ってくれる?」
あくまで大人の対応をする。
「俺、好きな人がいるんです!!」
颯人は、真剣な表情で言った。
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