アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
過去 2
-
思っていた通り、数分後に颯人は体力がないのでバテてしまった。
「悪いっ」
颯人の真っ青な顔に、驚いたあざみが謝った。
「平、気…」
「あざみ、俺が颯人を家まで連れていって休ませとくから夕飯までに家に帰って来いよ」
「わかった!」
あざみは新しい土地での生活に、色々な事をしたいらしい。
返事をしたかと思ったら、あっという間に走ってどこかに行ってしまった。
(早っ!)
茉莉はため息をついてから、歩けなさそうな颯人に背中を向けた。
「ほら」
「…」
ボーッと立ち尽くしている颯人の両腕を自分の肩に乗せ、おんぶをした。
「大丈夫か?悪かった、弟が無理言って」
「…平気」
(あざみには、1人で遊んでもらうことにしよう)
妹の百合はあざみの性格がわかっていて自分が疲れるのを知っているので、早々にその下の弟の蓮の世話をすると言い、母の家事の手伝いをしていた。
アウトドア派とインドア派では、うまく遊べない。
この日から、俺は颯人と一緒に部屋で過ごす事を決めた。
だから、どの兄弟よりも颯人と一緒に過ごすことが多くなった。
一緒にといっても遊ぶわけではなく、2人で同じような事はしなかった。
颯人が倒れた日に、颯人の部屋に送りに行きベッドに寝かせた時、机の上に編み針が置いてあった。
「ん?これは…」
「…俺の」
「これ、颯人のか?」
「うん、母さんに編んでる。母さんはこういうの出来なくて、すごく喜んでくれるから…」
「そうなのか!すごいな、颯人は」
横になっている颯人の頭を撫でた。
颯人は照れているのか、顔を背ける。
颯人は器用に編み物をしていた。
「細かいな~!」
「…」
颯人はチラッと茉莉を見るがすぐに目線を下に向け、手の動きは止めなかった。
(うるさかった、かな?)
茉莉は颯人の頭を撫でてから、父親から借りた英語で書かれた小説を手に持ち、近くに座った。
栞を挟んだページを開く。
少し経ってから、背中に何かが当たる。
(…ん?)
首を捻ると、背中には颯人の背中が当たっていて背中合わせになっていた。
颯人は何もなかったかのように、黙々と編み物を編んでいた。
(ヤバイ…かわいいな)
茉莉は何も言わずに、そのままの格好で小説を読むことにした。
茉莉の邪魔をしないように、同じ部屋にいるのが当たり前になる。
それが茉莉の部屋だったり颯人の部屋だったりと、こういう風に日本にいる1年を過ごした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 164