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そして… 1
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あれから、裕汰の監視が厳しい。
(好きな人を盗られたくないのは、俺も同じだし。でも、颯人の心には俺でも裕汰でもない奴がいるんだ)
どう頑張っても、叶うはずもない。
(それでも、練習で俺を選んだ)
1年だけの隣のお兄さんだからなのか、年の功で何でも知っているからと思われたのか。
(選んでくれたのが俺で、本当に良かった)
改めて思った。
もし逆に裕汰が選ばれていたら…きっと立ち直れない。
そんな事を、今までずっと思っていた。
だから奮発して高級なホテルを探して、今週末に予約した。
(これで、終わり)
颯人が幸せになってくれるなら、諦めようと思った。
何度も何度も、諦めようと思った。
でも…
(駄目だ、出来ない)
告白する事も出来なくて、諦められなくて…
考えないようにするために、1年~3年の小テストの紙の山が部屋に散らばっていた。
颯人の教室に教えに行っても、普段通り淡々と授業だけをしていく。
廊下で会っても目で追わず、視線も合わないように違う方向を見ていた。
裕汰と目が合うと茉莉は睨まれていたが、日に日に哀れみの目になっている事に気づいた。
(…勘違いしてるな、コイツ。なんかムカつく顔しやがって)
どう見ても、ここ数日間に颯人が茉莉の部屋に行かないから、振られたとでも思っているのか。
すれ違うと、鼻で笑っている感じだった。
(告白をしてもいないけど、振られたのは確かだ)
颯人の近くに入れる裕汰を、また羨ましく思えた。
だが…
(友人のまま離れないで側にいれるのと、身体に関係になったのに離れるのと、どっちがいいんだろうな…)
答えの出ない疑問を誰かに言えるわけもなく、ただただ心の中で自問自答を繰り返しているしかなかった。
「茉莉!ここにいたの?」
ゆっくりと顔を声の方に向けると、かりんがいた。
「かりん、お前が百合に颯人の事を話したのか」
妹と同級生のかりんに言う。
「そうよ?親友が悩んでいたら、どうにかしてあげたいじゃないの。あ、ウチの生徒も悩んでいたしね」
ツラッと言われた。
(接点が無いにしても、生徒である颯人を後付けで言うなよ!)
「百合も喜んでいたわよ。『颯人に会えた』って」
「…まぁ、そうだろうな」
自分も特別な感情がなければ百合みたいに、ただ再会を喜んだだけだったかもしれない。
(…自分の招いた最悪の結果だな。もう、どうする事も出来ない)
颯人が幸せならと、ずっと何回も何回も嫌になる程、自分に言い聞かせた。
(好き、なんだ)
頼ってくれるのが嬉しい。
自分を見て、微笑んでくれるのが嬉しい。
誰にも負けないくらい好きで、好きで…。
(でも、この親しい関係が壊れるのが嫌で)
裕汰みたいに、颯人に猛アピールが出来ない。
今思うと、一生の別れでもないのに7年前に別れを言えなかった事が尾を引いていた。
(土曜日の日に、それだけは颯人に謝ろう…)
今じゃ2つも本音を言えないでいるから、せめて過去の話だけでも話そうと決めた。
こうして、約束の土曜日になった。
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