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そして… 2
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裕汰の目があるのもそうだが、学校の関係者に休みの日に颯人を自分の車に乗せているのは見せられない。
あらかじめ颯人には学校や駅、コンビニはもちろん公園やお店以外でわかる目印になる場所を聞いていた。
「…だったら駅3つ行った所で俺が降りるのは?南側が繁華街だからみんなそっちに行くから、北側に歩いて行くとか…」
「北側って、確か住宅地だよな」
「駅に着いたらまず茉莉に連絡して、茉莉は学校を出発する。俺はその辺を適当に歩く」
「俺が駅3つのエリアに行った時に連絡して、そこで拾えばいいんだな」
「裕汰は振りきって来るから、大丈夫」
茉莉は驚いて、ドキッとした。
(俺の心の声を、聞かれたみたいだな)
「…俺も振りきらないとな」
「裕汰を、助手席に乗せて来ないでね」
「助手席に、裕汰は絶対乗せない!」
(助手席に乗せるのは、颯人だけだ)
そんな茉莉に、颯人は微笑みながら言った。
「ん、よろしくね、茉莉」
そんな事を話していたが…。
当日の朝。
考えていた通り目の前に、血相を変えて走ってきた裕汰がいた。
息を切らしながら、大声で茉莉に話してきた。
「…茉莉ちゃん!颯人と2人で、どっか行くんだろ!!」
(…颯人は、巻けたのか)
作り笑いをする。
「颯人?行かないよ。俺は実家に帰るの」
嘘を言った。
(俺も、裕汰を巻かないとなぁ…)
「嘘をつくなよ!今日なんて颯人、すごく喜…」
裕汰は、途中で言葉を言うのを止めた。
(やっぱ、嘘ついたのバレたな…って、颯人が何だって??)
最後の方が聞きづらかったので、茉莉が裕汰に聞き返した。
「颯人が、何?」
しかし、裕汰は答えなかった。
「とにかく!茉莉ちゃんは、颯人に何をしたいの?どうしたいの?!この学校は恋愛に関しておおらかだけど、先生と生徒って駄目なんじゃないの?!」
(確かに、ウチの学校は恋愛歓迎だ。…先生と生徒は聞いたことがない)
痛いところを言われた。
裕汰の言葉に心が刺さった。
教諭が一生徒と関係を持つ、それがどんなに世間的に悪評になる事。
『未成年をたぶらかした!』とか言われて学校側と他の生徒の保護者に責められるとかは勿論、考えた。
颯人に手を出した時から今でも変わらないのは、『颯人だけは守る事』
それはなんとしてでも守ろうと思っていたから、今やるべき事を優先する。
つまり、白を切って裕汰を振りきる。
「…わかった、わかった。お土産、買ってきてやるから泣くな」
「茉莉ちゃん!真剣な話をしているんだ、俺は!」
裕汰の目は真剣だった。
(こいつも、真剣に颯人の事が好きなんだな…)
その、真剣さについ、思っていた事を口走ってしまった。
「…俺はお前が羨ましいよ。素直に言いたいこと言えて」
茉莉は静かに言った。
「え…?」
その言葉に、裕汰が目を見開いた。
茉莉がハッとする。
(本音を言ってしまった…)
裕汰が口を開いて、何か言おうとした時…。
「裕汰!悪い、これって…」
愁が歩いてきた。
「…話し中だった?」
茉莉と裕汰を交互に見て、愁が聞いた。
「いや…終わった。じゃあな!」
茉莉は早口に言う。
ここぞとばかりに、逃げ出した。
後ろをチラッと見ると、裕汰は呆然と立ち尽くしていて、愁はこちらを見て微笑んでいた。
(颯人が、事前に愁に『裕汰を止めといて』とでも言っといたんだろうな…)
茉莉は、駐車場に停めていた自分の車に、慌てて乗り込んだ。
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