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お題「ネックレス」
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Twitterのお題企画より。
「ネックレス」でSS
華鬼×人間
ネックレス→首飾りで表現してます。
診断はこちら→http://shindanmaker.com/426140
─────
静かな、満月の夜だった。
今夜、ヒジリと出会ってから幾度かの年月を経て、ようやく婚姻の契りが結ばれる。
純白の着物をこしらえたレイは、正座をしてその時が来るのを待っていた。長くなった髪を簪で整え、目尻と唇には、ほんのり色づく紅が塗ってある。
すべて、あの時、貴方と出会った姿。
静かだからこそ、良くわかる。近づいてくる足音。いよいよだ。
レイの部屋に、月明かりが照らされる。キシ、キシ、と床を軋ませながら、ヒジリはレイが座る前で膝をついた。
紅蓮の髪に、金色の瞳。そして、白銀の二つの角。薄くスミレ色がかった白い着物に包まれた姿は、思わず見とれてしまう。それが華鬼──ヒジリの姿だった。
ヒジリは、ふと笑って、初めて会った時のようだ、と言った。そのあと、ポツンと何かを呟いて、レイの手を引き、立ち上がる。
今宵が、一番綺麗だ。
レイの頬が染まったことに、違いはなかった。
ヒジリに手を引かれ、木々が生い茂る道を歩く。ゆっくり、緑豊かな景色を見渡しながら、レイは思い出を噛み締めた。
この世界に来た時、ここは荒地だった。そして、初めて会ったヒジリも、無愛想で乱暴な鬼だった。
ヒジリは、鬼だからという理由で天界中から嫌われ、下界へ堕とされた。力さえ、奪われて。一人、ただ孤独に生きてきた。
さらに、そこに現れたのは、子孫も残せない人間の男の花嫁。嫌悪感を抱くのは当たり前だと、レイは思っていた。
しかし、ほんの僅かな時に垣間見る優しさ、復元していく緑。レイは、勘違いしていたのだ。
ヒジリは不器用な手で、レイを守っていた。傷つけながらも、それでも必死に身体を張っていたのだ。それを知った時には、恋に落ちていて。
鬼も、ココロを知った。
森を抜け、たどり着いたのは満月がよく見える大草原。ヒジリとレイは向かい合って座り、まだ蕾のままの花を摘み始める。
この世界に指輪なんてない。だから、お互いに作った花の首飾りを交換して、愛を誓うそうだ。
この蕾が花咲かせる時は来るのだろうか? そうしたら、どんな花を咲かせる?
レイは、そう思いながら一つ一つ丁寧に編んでいると、だんだん目頭が熱くなってきた。溢れそうになる涙をグッと堪えて、出来上がった花の首飾りをヒジリの首にかける。ヒジリも出来上がったらしく、首にふさりと優しくかけられた。
ヒジリに教えてもらった通りならば、次は口づけだ。レイは、そっと目を閉じる。
レイ、と愛おしい声。そのあと、ヒジリが強く手を握ってきたので、目を開けるとヒジリは微笑んでいて。
一体、どうしたのだろうか。
レイが首を傾げていると、ヒジリは首飾りにフッと息を吹いた。その瞬間、レイの目が見開く。
──咲いた。白い花が、咲いたのだ。
愛している、と聞こえたような気がして、レイは咄嗟にヒジリを見た。すると、ヒジリは自分のかけている首飾りに目を落とす。
俺も、愛しています。そう、想いを込めて。
ヒジリの首飾りに息を吹きかければ、握っていた手が光り、蕾だった花が白く綺麗な姿に開花した。露に濡れたそれは、月の光でキラキラ煌めき、どんな宝石のネックレスよりも綺麗だ。
ほろり。レイの頬に涙が伝った、その時。
レイとヒジリが座っている場所から、一瞬で草原が花畑に変わっていき、周り一面に白い花が咲き誇った。草原を囲む木々も桜の花を満開にさせ、舞う花びらはまるで雪のよう。
鬼は、愛を知った。
そして、愛し合う新郎新婦に盛大な祝福を。
レイの瞳からは、とめどない涙が溢れる。
その震える身体をヒジリは抱き寄せて、コツンと額を合わせた。涙の先に見えるのは、幸せいっぱいの笑顔。
どちらからともなく、二人はゆっくりと唇を合わせた。
End.
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