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隣の佐藤くん ②
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放課後になり、俺は何故か職員室に呼ばれた。
素直に向かえばまだ20代の若い担任が椅子で待ち構えていて、こう言った。
「室井、お前女子に囲まれて浮かれてるからこの資料を運んで貰う。」
「なんて理由で生徒パシってんすか」
訳もわからず資料を持たされて渋々教室に戻る。
やっと階につき、ドアの前まで来た。
ドアに手を掛ける前に、中に人の気配がしてそちらに目を向ける。
…佐藤だ。
しかも1人。また話しかけられそうだな。
まあ気にせず入ろう。
片手でうまく資料を持ちドアを開ける。
すると勢いよく佐藤がこっちを向いたのだ。
「…あ」
ぽかんと佐藤は口を開けて呆然してる。
そんな佐藤にはてなを浮かべるが、その瞬間佐藤はガタガタっと音をたてて座っていた椅子から離れた。
?あれ、佐藤の席って窓際じゃなかったよな…?
あれって…
「……俺の席…」
つい口に出してしまった。
それを聞いた佐藤はぎょっとし、あわあわし始めた。
「や、あ、あの、えとっ…!」
「何でそんな…」
慌てるのって続こうと思ったら、
勢いよく頭を下げられた。
「ごめん!!お、俺そんなつもりじゃ…!た、ただ窓の外を…」
一生懸命訳を話す彼にまたさらにはてなを思い浮かべて、こう言ってしまった。
「俺のことが好きだからじゃなくて?」
そう言うと佐藤の顔がみるみるうちに青くなっていく。
あれ、言っちゃいけなかったやつかな。
呑気にそう思ってると、佐藤は机にあるカバンを持って走りながら教室を出て行った。
「?…なんだったんだ?」
訳がわからないので資料を教卓の上に置き、俺も教室を後にした。
***
次の日。
佐藤の昨日の行動なんて忘れていて、今日も話しかけてくるんだろうなと頭の隅で思っていた。
自分の席に座って後ろのウッチーと談話していた。
佐藤は珍しくHR開始時間のギリギリにやってきた。
さあどんな話題だ。と待ち構えてると、
こっちに目もくれず、話す先生の方を向いていた。
あれ?あーでもHR中だもんな。
そりゃ話しかけられないわ。
…まあこちらとしても助かる。
ふいっと佐藤から目を離し俺も前を向く。
***
翌朝。
昨日は一回も話しかけられなかったな。
こんな珍しいこともあるんだ。
普段絶対しないのに遅刻してたし、体調悪いんだろう。
今日も教室に入ると、既に佐藤がいた。
自分の席で静かに本を読んでる。
俺も黙々と自分の席へと向かうが、俺に気づいた佐藤が急に立ち上がり友達の所へ駆け寄っていった。
「?」
またしてもハテナ。
今のタイミング良すぎじゃないか?
その姿を目で追いながら椅子を引いた。
今日も話しかけられないのか。
そう思うと自然とため息が出た。
「…。」
否、なんでため息が出たんだ。
寧ろ好都合だろ。
どうしたんだろ俺。
ちらほら駆け寄ってくる女子の挨拶に返す事ができないほど、内心動揺した日だった。
***
あの放課後から3日が経つ。
今日の朝も話をしていない。
丸三日間一言も、だ。
現在授業中で、隣の席は相変わらず佐藤だ。
佐藤は黒板の字を一生懸命に書き写している。
何事にも必死だよなこの子。
なんて呑気に観察していたら、
佐藤が使っていた消しゴムが俺の足元に落ちてきた。
それに佐藤は気づいていないらしく、
仕方なくそれを取った。
そして佐藤の方に消しゴムを持った手を伸ばし、佐藤と呼びかけた。
「消しゴム落ちたよ」
顔を見ながら言うと、やつが顔を強張らせた気がした。
目を逸らされ、無言で消しゴムを取ったのだ。
ありがとうもねーのかよ。
もやっと胸の奥で違和感を感じた。
その違和感が気持ち悪くて、つい口走ってしまった。
「佐藤、お前最近なんなの?」
授業中のため声は抑えめに話しかける。
『なんなの?』っていうのは、いつもと違くない?っていう意味を込めて言ったはずだが、
佐藤は違う捉え方をしたようで、
「ひ、ご、ごめんなさいっ」
俯きながら蚊が鳴く声のように謝罪をしてきた。
いやそうじゃなくて!!
理由が聞きたいのに、終わりのチャイムが鳴った瞬間佐藤は教室を飛び出した。
えええ。
呆然。
「湊〜、お前太郎ちゃんになんかしたの?」
呆然してる俺を見てニヤニヤしだすウッチー。
いつもならニヤニヤ顔を批判するが、今はそんなどころじゃなかった。
「……なんもしてない」
「それはないだろー!泣きそうな顔してたよ?」
その言葉にまた違和感を感じ、うるさいと言い捨てそっぽ向いた。
(……この違和感なんかやだ。)
***
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