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「......、...さひ、朝比」
誰かの声が聞こえて目を覚ますと、左側に由鶴さんがいた。
「由鶴さん...」
身体を起こそうとすると由鶴さんに止められて、俺は素直に布団に戻った。
「体調はどう?まだ気分悪いか?」
いつもの優しい由鶴さんなのに、どこか切なさそうで、声が悲しそうに聞こえる。
「もう...大丈夫」
俺がそう答えると小さく微笑んだ。
「あっ、兄貴からもらった薬飲めたんだ?」
「兄貴...って、さっき......来てた人?」
「あぁ。朝比にちゃんと紹介しないとだな。ちょっと横になってな」
そう言って部屋を出て間も無く
「あーーーーにきーーーーーーーっ!!」
由鶴さんの叫ぶ声が部屋中どころか家中に響いて
「うるさいわぁ、ぼけぇ!?」
由月さんの怒鳴る声が聞こえて来た。
(この調子だと兄弟喧嘩も賑やかなんだろうな...)
「来たよ」
由鶴さんの後ろからお兄さんがやって来た。
俺に軽く手を上げて、由鶴さんと一緒に俺の隣に来た。
「体調どう?薬飲んで気持ち悪いとかない?」
「大...丈夫、です」
「よかった」
そういうと由鶴さんと同じ顔で小さく微笑んだ。
「俺、柚晴。こいつらより10も離れてるけど一応兄貴。こいつらまだ学生だけど俺はもう社会人だから、大人なわけだから俺のことお兄さんでもなんでも呼んでいいからね、あーちゃん」
「あーちゃん...?」
「朝比くんのこと、そう呼ばせてもらっていい?」
「...いいですよ」
「ありがと、あーちゃん。いやーそれにしても可愛「おい」」
柚晴さんの言葉を遮るように由鶴さんは声をかけた。
「なによー?」
「なによ、じゃねぇよ。自己紹介終わったんだから、もう下に行ってろよ!」
「いいだろ、少しくらい!可愛い子拝んだって」
柚晴さんが少し拗ね始めた。
「ダメだ」
「なんで!?」
「ダメなものはダメ!いいから出てけ!」
由鶴さんは無理矢理柚晴さんの背中を掴んで廊下へ引きずり出した。
「えぇぇぇぇ!?お兄様を廊下に出すか、普通!?いいじゃんか、少しぐらいあーちゃん見てたって!!」
「ダメなものはダメって言ってんだろ!?俺のもんに近づくなバーーーーーカっ!!」
由鶴さんはドアを強く締めて鍵をすぐにかけた。
俺のもん...俺の物......思い返すと急に顔が熱くなった。
「ったく...ごめんな、朝比?兄貴があんなで」
「ううん、大丈夫...だよ?」
「ならいいんだけどさ」
ため息をつきながら俺の隣に座った。
「......」
「......」
お互いなにも喋らないまま、沈黙がずっと続いた。
何から話せばいいんだろ...普通の話?でも普通の話ってなんだっけ?
考えても何も浮かばなかった。
(でも、まず自分から言わないと...)
「あの...」
「ん?」
「あの...さっきはごめんなさい......」
そう言うと由鶴さんは少し表情が暗くなった。それでも俺に近づいて座り直した。
「あの時、助けに来てくれたのは...すごく、嬉しかった...」
どんどん自分の声が震えてくる。
「けど、血まみれ...になった、由鶴さん......見たら、怖く、なっちゃって...でも、嫌いとか...そんなんじゃ......ごめ、なさ...いっ」
気づいたら涙が溢れでて来た。泣いてたらますます迷惑かかるのに、早く止めようと服の裾で必死に拭った。けどますます出て来た。
「迷惑、かけ...てっ、ごめん...な、さっ」
言い切る前に俺は由鶴さんに抱きしめられた。強く強く...優しく抱きしめられた。
「怖い思いさせてごめんな、朝比?何も分かってなくて...ただ助けることしか考えてなかった。朝比を傷つけた奴ら許せなかった...だから、殺すしかないと思って」
由鶴さんの気持ちがどんどん伝わってきた。
「だけどあんなにボコボコにしたのは逆効果だった...朝比を怖がらせてたなんて、気づかなくてごめん......こんな俺でごめんな朝比」
由鶴さんの優しい言葉に俺は、強く抱き返した。
「由鶴さ...ん」
「ん?」
「助けて、くれて...ありがと......」
ますます涙が溢れ出し由鶴さんを抱きしめながら泣いた。泣いて泣いて疲れるまで泣いた。そんな俺を由鶴さんはずっと優しく抱きしめて頭を撫でてくれていた。
この時俺は
由鶴さんのことが
好きになった。
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