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涙腺が切れて涙があふれ出した。
こんな惨めな姿を見せられなくて、その人に背を向けた。
「...悪い。聞いちゃまずいこと聞いたか?」
「ちがっ...」
ダメだ...記憶が蘇る。
有沢さんに別れを告げられた日のことが...脳裏に浮かぶ。
「あの日...付き合ってた人、と...別れたんだ、でも...まだ、好きで...好きで......忘れたいのに、忘れられないっ」
「......お前」
「それで...忘れようと思って、誰か...いい人、って探した......けどっ、あなたに...会って」
「もういい...」
「つめたくされた、かと...思っ、たら...優しくされて、それさえも......辛くて」
「もういいから」
「だから、あなたのことも...忘れようと、なのに...また現れて......その、挙句...追いかけてきて」
「......おいっ」
「っ、これ以上...」
「もう黙れよ」
その人から冷たいく聞こえてきた。
また俺は出しゃばったことを...
「ごめんなさ、いっ...ごめん、なさ......ぃ」
ちゃんと謝りたいのに声が震えて涙も止まらなくて、
口が動かない。
「......こっち向け」
ゆっくりその人の方に身体ごと向けようと身体を動かした。
次の瞬間、
その人に腕を引っ張られ抱き寄せられた。
「もう話さなくていいから。もう聞かないし...だから今は泣くだけ泣いていいぞ」
その人の声が優しくて、抱きしめる強さにも温もりがあって...涙がますます溢れ出た。
「辛いなら忘れなくていいだろ?な?」
「そ、んな...優しく、しないでっ」
「優しくするに決まってんじゃん?てか...弱ってる奴ほっとけねぇだろ?」
抱きしめられながら、その人がゆっくり左右に揺れ始めた。
「でも、俺こうやってあやす事しか出来ねぇけどな?」
そう言いながら笑い飛ばした。
少しは前向きになれるけど涙は止まらなくて、
その人から身体を離されると顔を覗かれた。
「まだ泣いてんのか?」
「......涙、止めたい...のにっ、止まんな、ぃ」
「あれまー...じゃ、俺が止めてあげようか?」
「......えっ?」
その人は俺の頬に手を添え、目元の涙をぬぐった。
少し耳の近くに指が触れて一瞬肩がビクついた。
それに反応してその人もビクついて
「やっば...」
その人の小さな声が聞こえたかと思ったら、キスをされた。
しかもそれは、長くて...少し口が離れるたびリップ音がなる。
していくうちにその人から甘い香りがしてきて、キスがどんどん深くなっていって口内に舌が入って来た。
「ふぅ...ん」
声が漏れる...
「ンぅ...ぁ」
鼻から声が抜ける。
ようやく終わる頃、何故か腰が抜けて思わずその人に身体を預けた。
「やり過ぎたか?ごめんな?」
「い、いえ...」
「涙止まったな」
微笑んで俺の頭を撫でてきた。俺までも頬が緩み
「はい...」
微笑んだ。
「ふっつーーーにさ、可愛い顔してんじゃん」
「可愛くないですよ。それに男に可愛いって」
「あっ」
その人は何かを考えついたかのように笑顔を浮かべた。
「ねぇ名前何?」
「えと崎谷です...」
「ちーがーう!下の名前だよ!」
「朝比です」
「ねぇ朝比、俺と付き合ってよ」
考えついたのがまさかのこれって......どうなんだろ?
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