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チョコレート色の回想を、四。
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「え?」
光輔の言葉に虚をつかれて、俺は声を出した。たまたま会っただけかと思ってたら、違ったらしい。
「えーっと……どした?なんか用?」
「……うん」
「何の、用?」
自分で尋ねておきながら、なぜかおれの鼓動がおかしくなる。ばくばくうるせぇな心臓。
てか、なんでこんなにおれ、キンチョーしてんの?光輔相手に。
「……これ」
光輔が、何か小さいものを放る。咄嗟に受け取って、おれは驚いた。だって、これは。
「……チョコ?おまえの用って、これ?」
それは、一口サイズの市販のチョコレート。色んな味があるやつ。
おれが言うと、光輔は黙って俯いた。そして、踵を返す。
「……うん。じゃあね、それだけだから」
そのまま、光輔は、去ろうと、して。
「……待てよ!」
思わず声をかけた。それなのに、光輔が振り向いて、その顔を見て、何を言えばいいのかわからなくなった。
しょうがなく、あるものを差し出した。
「ん、と……これ」
「…………!」
それは、葉月にもあげた、合格を願っているような名前のチョコレート。
「これ、で、さ……受験、頑張れよ」
「っ!……うん」
おれのチョコを受け取って、光輔は泣き笑いのような表情を浮かべた。その顔が、あまりにも切なくて。
おれは、その表情に胸がぎゅっと掴まれて、息もできなかった。
光輔が今度こそ背を向けて、走り出す。
おれは、その背中に何か、言葉をかけることも、できない。
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