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仄明かり~再会~①
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ベットに横になりながら、由貴はぼんやりと窓の外を眺めていた。
空はどんよりと灰色の雲が立ち込めていて、今にも雨が降りだしそうな天候だ。
それはまるで今の自分の心のよう……。
今や由貴の心は閉ざされ、以前のように笑うことはなくなってしまっていた。
それは感情をなくした、精巧な美しい人形のよう。
目を伏せ、寝返りを打った時、玄関のインターフォンが鳴り響いた。
誰だろうか、と由貴は不審げに眉を寄せる。
由貴がここに住むようになってから、訪問してきた客は潤賀だけだ。
だとしたら、インターフォンを鳴らす人物は、尚哉か潤賀だろうか。
だが、二人は鍵を持っているから、インターフォンを鳴らすことはない。
もしかして、鍵を忘れて家に入ることができず、インターフォンを鳴らしているのかもしれない。
怠い躯を懸命に起こし、ベットから降り立つと再びインターフォンが鳴った。
焦った表情で、玄関へ駆け足で向かう。
万が一のことを考え、由貴は恐る恐るドアスコープを覗き込んだ。
だが、そこには誰も居なかった。
誰かのイタズラだろうか……。
内鍵を解錠し、そっと扉を開け、ちょこんと顔を覗かせるとキョロキョロと辺りを見回す。
やはり誰もいない。
なかなか応答しない由貴に、痺れをきらして帰ってしまったのだろうか。
尚哉や潤賀だったら、由貴が応答するまでインターフォンを鳴らし続けるだろうし、声を掛けてくるはずだ。
そう考えると、今の訪問は尚哉や潤賀ではないということになる。
(良かった、兄さんや潤賀さんじゃなくて………)
ほっと安堵の息を吐き、由貴は扉を締め内鍵を施錠した。
寝室に戻ると由貴は再びベットに横になり、窓の外に目を向ける。
ぽつり、ぽつり、と雨が降りだし、次第に雨脚が強くなってきたと思うと一気に土砂降りへと変わった。
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