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『もしかして、もう彼女ができたとか?』
口調がちょっと嫌みっぽくなるが、それは許してほしいところだ。
だが、光希はそれには気づかずに笑顔で頷いた。
「なんかさ~電車の中で見かけて、オレに一目惚れしたんだってさ。篠嵜女学館の二年で采華柚希(うねはなゆずき)ちゃん。すげぇ、可愛いんだ」
『へぇ……一目惚れねぇ……。光希、前の彼女と別れたばっかじゃん。それでもうその子と付き合うんだ』
「まぁね。だって運命の恋人かもしれねぇじゃん。偶然、電車で見かけて、それで一目惚れして……って、これってまさに運命だと思わねぇ?」
────…偶然?
偶然なわけないじゃないか。
偶然を装って声をかけたに違いない。
女子たちの間には光希事情の連絡網があり、光希の情報は駄々漏れだ。
光希がいつも何時の電車の何両目に乗るか、そしていつ誰と付き合って、いつ別れてフリーになったのかも……。
光希に関する情報が回るのは速い。
『思わない、思わない。どうせまた直ぐに別れるんだから』
「も~、そんな可愛い顔して、どうしていつも意地悪言うかなぁ」
拗ねたように唇を尖らせ、光希が由貴の髪をぐじゃぐじゃに掻き回す。
由貴はぐじゃぐじゃに乱れた髪を整えながら、上目遣いに光希を睨み付けた。
『もぅ止めろよな。ぐじゃぐじゃになっちゃったじゃん』
「ぐじゃぐじゃになったって、由貴は可愛いよ。なぁ、由貴って付き合ってる奴とかいねぇの?」
『え?』
驚いて、一瞬返す言葉に詰まる。
「由貴ってそうゆー話ってしねぇだろ?オレばっか話してさ、それってなんかズルくね?」
『僕、別に好きな人なんていないし……、だからズルくなんてない』
光希に言えるはずない。
僕が好きなのは、目の前にいる光希なのだから……。
光希はノンケだから、どんなことがあっても絶対に言えない。
「本当、勿体ねぇよなぁ」
『勿体ないって、なにが?』
「由貴って、学校中のどの女子よりも可愛いし。もし、由貴が女の子だったら、絶対に付き合いてぇもん」
女の子だったら……か……。
それは常に由貴自身が常に思っていたことだ。
女の子だったら、気兼ねなく光希と付き合えるのに……。
胸の奥がぎゅーと締め付けられるようだ。
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