アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
③
-
『な、なぁ光希。僕が女の子だったら付き合ってくれんの?』
「ああ、もちろん付き合う付き合う。まぢ大切にするし」
光希が軽い口調で答える。
『う~ん……。僕が女の子だったとしても、光希と付き合うのだけは遠慮しておく』
「えぇ~。どうしてだよ」
『次々と彼女を代える男はごめんだってこと』
「そんなひでぇ言い方すんなよ~」
光希は大袈裟に、その場に頽れた。
「オレは次々に彼女を代えてるわけじゃなくて、運命の人を探してるんだよ!」
『だったら、その運命の人が男だったらどうするんだよ』
「………ん…───、どうだろう……。試しに付き合うかな」
運命の人なら男でもいいのか───と、胸の内で突っ込んだ。
男でもいいなら、僕でもいいんじゃ……。
だが、今さっき光希とは付き合わないと言ったばかりだ。
由貴は出かかった言葉を、ぐっと飲み込んだ。
その時、光希が急に何かを思い出したかのように声を上げ、頽れた躯を起き上がらせた。
「あっ!なぁなぁ、由貴。今日の放課後空いてるか?」
『今日は大切な用事があるからダメ』
「用事って?」
なに?なに?と、由貴の顔を覗き込む。
『光希には関係のないことだから』
「ちぇ、冷たいの」
光希が拗ねるように唇を尖らせる。
『なら、采華柚希ちゃんだっけ?彼女に付き合ってもらえばいいだろ』
「あ──、柚希ちゃん?試写会のチケットが手に入ったから誘ったんだけど、ホラー映画は苦手だから絶対にイヤだ!って言われちゃってさ」
確かにホラー映画が苦手な人ならイヤかもな。
しかもデートでホラー映画を誘うなんて、もしや光希の奴怖さに便乗して、彼女との距離を縮めようって魂胆だったんじゃ……。
「由貴、ホラー映画好きだったろ?なぁ、一緒に行こうぜ」
『好きだけど……。で、なんて映画?』
「ほら、今宣伝してる死神の舘って映画 」
『その映画、観てみたいって思ってたやつだ』
「じゃあ、そう言うことで。一緒に行こう」
『光希、僕の話を聞いていなかったのか?今日は用事があるからダメだって言ってるだろ』
そうだっけ?と光希は目をパチクリさせた。
「その用事、明日に回せねぇの?」
『もうしつこいな。ダメなものはダメなの』
「ちぇ、冷たいの」
唇を尖らせ、両手を頭の後ろで組む。
その時、廊下を通じる扉のガラスに、担任の教師の影が映った。
扉が開き、担任が教室へと入ってきて、クラスメイト達が各自各々の席に戻っていく。
自分の席に戻っていく最中、光希が由貴の耳元に唇を寄せ、囁いた。
「試写会、考えといてよ」
あれだけ用事があるからダメだって言ってるのに……。
由貴は光希の後ろ姿を見つめたまま、はぁ……と深い溜め息をついた…─────。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 193