アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
⑨
-
『……………っ』
「あの男と付き合ってんのか?」
由貴の肩を掴んでいた光希の手に、力が込められていく。
指が肩に深く食い込み、由貴は痛みを感じる。
『痛っ、離して……』
「あの男と付き合ってんのかって聞いてんだろ。答えろよ」
光希の手から逃れようと身を捩ると、光希に押し殺した低い声で詰問された。
その声は、ひどく苛立っているように聞こえる。
『僕が誰と付き合おうと、光希には関係ないだろ』
「否定しないってことは、あの男と付き合ってるんだな。あの男とどこまで進んでるんだ?もうキスは済ませたのか?」
『どうしてそんなこと、光希に話さないといけないんだよ』
由貴は、ムッと唇をへの字に曲げた。
ざりっと、神経を逆撫でされたみたいだ。
「俺は……ずっと由貴のこと………」
光希が眉を潜めて、なにか言いたげにじっと由貴を見つめる。
暫しの沈黙の後、掴まれていた肩から光希の手が外れ、頬へと触れてきた。
頬を撫でていた指が、移動し下唇を撫でてくる。
『……光希………?』
下唇を撫でる光希の所作に戸惑っていると、光希の端整な顔が傾いたかと思うと、ぐっと近づいてきた。
『やっ』
唇と唇が触れる寸前のところで、短い悲鳴と共に由貴は顔を背けた。
ぐっと光希の躯を押し退け、踵を返す。
ドアノブに手をかけてから振り返り、腹立たしげに光希を問い詰めた。
『どうして?彼女がいるくせに、僕にキスをしようとするなんて、どう言うつもりだよ』
「キスしたくなった……」
由貴は信じられないと言うように目を見開いた。
『最低だな。光希がそんな奴だとは思ってもみなかった』
悪態をつき、乱暴に扉を開ける。
じっと光希を睨み付けたかと思うと、無言のまま屋上から校舎内へと戻って行った。
バタンと乱暴に扉を閉め、由貴は扉に背中を凭れさせかけ、はぁと深い溜め息をつく。
────…キスしたくなった
そんな台詞が蘇ってきて、苦笑する。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
64 / 193