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第一章 出会い(8)
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西野がどんな人物なのか、俺の限られた人生経験からは想像もできないので、何とも言えなかった。でも、さっきも川口に言われたばかりではないか。『俺と同室NGなんて、他の誰とも無理』。たいていの奴とは何とか折り合いつけてやっていける自信があった。
「大丈夫です」
俺が腹をくくって答えると、桐谷さんは
「よかった。頼む」
と言って、破顔した。そして、
「これからが本題なんだけど」
と前置きして、
「中等部までと違って、高等部の寮では、生徒自身による自律的な管理が重んじられてる。住み込みの寮監もいないし、ここに並んでるファイルだって」
と、隣の書棚に並ぶファイルを指さし、
「全寮生の個人情報、つまり、出身地、家族構成や家庭の経済状況、所属する部活動や親しい交友関係なんかもばっちり記録されてる。寮の運営上、必要があれば、寮長はこれにアクセスする権限も持ってる。
とにかく、寮内で何か問題が起こっても、まずは生徒自身で解決することが求められてるんだ。
だから、風紀の乱れについても、それを抑制する仕組みを、ときには自分たちで用意しなくてはいけない」
そこで、桐谷さんは一度言葉を区切って、こう続けた。
「嶋田には、西野を監視して、風紀の乱れに繋がるような行動が認められれば、我々に報告してほしい」
桐谷さんは、そう言って、俺を見つめた。
「監視して、報告ですか」
「そう」
「それは、できません」
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