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第二章 秘密(1)
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中等部の東寮から、高等部の第一ドミトリーに引っ越してきてから、3週間が過ぎた。
その間の慌ただしさといったらなかった。
入居から立て続けに、寮では、入寮手続き、入寮式、歓迎コンパ、学校行事としては、高等部入学式、そして、入学式が終わると同時に、午後からはもう通常授業が始まり、そのほかにも、部活への入部手続き、部の先輩たちによる新人歓迎会、と目まぐるしい忙しさで、気づくと桜はとうに散っていた。
俺は、高校でも中学時代に引き続き、テニス部に入部した。
二重の意味で意外だったのは、テニス部の部長が桐谷さんだったことだ。
二重の意味で、といったのは、まず、激務のはずの寮長と部活の部長を兼任することがあるのか、という点。
これは桐谷さん自身の弁によると、自分以上の適任者がいなかったので仕方がない、ということらしい。
次に、中等部のテニス部に所属していなかった桐谷さんが、高等部から始めたテニスで、部長を務めるほど実力的に部内で頭角を現すことができたのか、という点。
こちらについては、入部してすぐに、自分の浅慮を恥じることになった。
桐谷さんは、中学での経験者も含めた2年生のうちで、群を抜いてテニスがうまかった。
明頌学園は、文武両道とはほど遠い、「文」に著しく照準が絞り込まれた超進学校だが、自分の軸が学業ばかりに偏るのが嫌で、俺は、中等部3年間、勉強以上に部活、テニスに打ち込んできた。
学校が外部から指導に招いたコーチのおかげもあって、中学最後の県大会で俺は、準決勝でその大会の優勝者にせり負けてしまったものの、県でベスト4の成績も残せた。
だから、自分はそれなりにテニスがうまいと自負していたのだが、そんなプライドも高等部のテニス部入部後たった一日で、桐谷さんに粉々に砕かれてしまった。
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