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第二章 秘密(6)
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寮では、西野と俺はきわめて良好な関係を築いていた。
彼は初対面の印象通り、気性が穏やかで、細やかな気配りと清潔感がある、ルームメイトとしてこれ以上ない人間だった。
こんなことがあった。
高校に入学して3週間ほどたったある日、俺はテニス部の朝練をあやうく寝過ごしそうになっていた。
部活で桐谷さんにしごかれて疲れている上に、高等部に移って授業の進度が格段に上がり、予習に以前より時間を取られるようになって、心身ともにくたくたで、前日の就寝前に目覚ましのセットをつい忘れていたのだ。
ぐっすり眠り込んでいるところに何度か名前を呼ばれて、俺はやっと目を覚ました。
頭がぼうっとしたまま薄く目を開くと、二段ベッドの上段に横になっている俺の方に、柵越しに顔をのぞかせて、西野が申し訳なさそうに俺を見ていた。
「あの、嶋田、今日は起きなくて、大丈夫?もう6時半過ぎたけど」
寝起きですぐには頭が働かず、情報処理に時間がかかった。が、
「6時半!?」
がばっと起きて、時計を確認すると、6時36分。
練習メニューは上級生と一緒だが、1年生が行うべき、練習前の準備は、当然俺も参加しなくてはならない。
朝練7時開始、1年の集合時間は6時50分。
寮からテニスコートまでは走って約5分、ここにいられる時間はあと10分切っている。
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