アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第二章 秘密(17)
-
「まさかこんな夜中に、猫にえさやりしてるなんて思わなかったな」
俺は西野とともに、中等部の西寮の裏手にある小さな東屋に来ていた。頭上を覆う藤棚から、豊かに垂れ下がった花穂が月明かりに美しく照らし出されていた。
俺の隣でベンチに腰をおろした西野の足もとには、3匹の猫が集まっていて、えさを食べ終えたあとも西野から離れようとしない。
西野は1匹を抱き上げて、自分の膝に乗せた。それだけで、そのトラ猫はのどを鳴らし始めた。ずいぶん懐いている。
「いつからえさやってるの?」
「去年の今くらいだったかな。寮の部屋にいたら、猫の鳴き声に気づいて。学校の敷地内に猫がいるなんてそれまで全然思ってなかったから、びっくりした。
休みの日の昼間だったから、気になって外に探しに行ったら、ここにこの子達がいて。
お腹空いてるみたいだったから、コンビニ行って、猫缶とかおかかのおにぎりとかいろいろ買って、試しにあげてみたら、結構何でも食べるし。
でも、寮則見たら、ペット飼ったり、野良猫にえさやりしたりしちゃいけないことになっているし、だから、それからは、夜中にこっそりここで何かあげてたんだ」
「第一に移ってからも、ここまで通ってたの?」
「うん」
「大変じゃない?毎晩」
「でも、お腹空かせてたら困るし。俺は、去年の春からえさやり始めたけど、その前はもしかして、1こ上の先輩からもらってたのかなって思ったんだ。その先輩が、高等部の寮に移っちゃってから、えさもらえなくなって、お腹空かせてたんじゃないかって。
だから、俺がやらなくなったら、また同じことが起こって、でも今度は誰にも気づいてもらえなくて、誰からもご飯もらえなくなるかも」
「大丈夫だよ。こいつら、東寮でもご飯もらってるから」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 246