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第二章 秘密(19)
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「安心した?」
「うん。ありがとう」
西野は涙で濡れた顔をあげて、俺に笑いかけた。そして、自分の着ていたカーディガンの袖口で涙をぬぐおうとするので、俺は自分の上着のポケットに入っていたハンカチを取り出し、
「悪い、これ、いつから入ってたのかわかんないやつだけど」
と言いながら、ハンカチで西野の顔を適当にぬぐった。西野はおとなしく俺の手に顔を寄せながら、
「いいよ。俺、嶋田が思ってるほど潔癖症じゃないし」
などと言う。俺が慌てて、
「潔癖症とか思ってないよ」
「ほんと?思ってるでしょ。こいつ毎日毎日どれだけ洗濯するの、って目で見られてる気がする」
西野は決して不満そうではなく、少し面白そうにそう言う。
「そんなことないよ」
「でも、先週も、俺がシーツ洗濯しとこうかって言ったら、なんか変な顔で俺のこと、じーっと見てた」
「あ。あれは」
「やっぱり」
西野は楽しそうに笑う。
「いや、違うんだよ。あのときは、ちょっと、ほかのこと考えてて」
西野はあのときと同じような、澄んだ瞳で、俺のことを見あげていた。
俺はふたたび、あんなことを疑っていた自分を恥ずかしく思った。
そして、今ここで、すべてを告白することにした。
西寮であったことを西野と会う前から桐谷さんに聞いていたこと、菅原と話したこと、今夜も海音寺と会っているのではないかとどこかで自分が疑っていたこと、全部。
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