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第三章 帰郷(5)
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新幹線の座席は、のぞみのグリーン車だった。
「学生なのに、もったいない。お父さんにいい席用意していただいて、悪いことしちゃったね」
と西野が言うので、負担に思われたくなくて、
「それ、会ったら言ってやって。俺ひとりだったら、グリーン車とか絶対なかったから。下手したら、18切符で帰れって言われてたよ。親父、基本、ドケチだけど、すげー見栄っ張りなの。にわか成金だから」
俺がわざと軽口をたたくと、西野は「じゃあ、お会いしたら、しっかりお礼言う」と笑った。
新幹線での移動は3時間以上かかったが、昼飯用に買った弁当を食ったり、グリーン車で無料配布されている車内雑誌をめくってみたり、はかどるとは思えないのに宿題のテキストを開いてみたり、ふたりでおしゃべりしながらそんなことをわやわややっているうちに、すぐに時間は過ぎていった。
西野とは、最近はいつも一緒にいるので、話すことが尽きないのが不思議なのだが、何かその場で目につく新しいネタがあると、それをきっかけにして他愛ないことをいくらでも話し続けられるのだ。
俺は、こんなにうまが合うと思える友人は初めてで、今回の帰省を西野と一緒にできたことが純粋に嬉しかった。
新幹線を降りて、そのまま駅の改札を出ると、俺たちは徒歩で俺の実家に向かった。
新幹線の停車駅から徒歩圏に自宅があることに西野は驚いていたが、俺の家に着くと、なお驚いたようだった。
「嶋田の家って、ビルなんだ」
俺の自宅は、1階を貸店舗にしてクリーニング業者へ営業所として貸し出し、2階を親父の仕事場として利用しているビルの中の、3階から5階までに位置していた。
ビルの入口にあるインターフォンで、母に帰ったと告げると、内側のドアの鍵が開く音がして、エレベーターホールに入れた。
そこから、エレベーターで自宅の入口のある3階まで上がると、ドアが開いた瞬間、下の弟が「隆くん!」と言いながら飛び出してきた。
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