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第三章 帰郷(7)
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「親父は?」
「ゴルフ。今日は早う帰る言うとったけん」
「篤は?」
「友達と図書館行っとるよ。受験生じゃけんね」
「ほんまに図書館?あいつ勉強しとるん?受かりそうなん?」
「さあ。まあ、入れりゃあどこでもええんよ」
母は鷹揚にそう言って、キッチンに引っ込んだ。
西野が何か言いたげにこちらを見ているので、「何?」と訊くと、
「なんか嶋田、家族といると、そういうふうなんだ。意外」
と面白そうに言う。
俺はなんだか急に恥ずかしくなって、でも、恥ずかしがっていることを知られたくなくて、その空気をごまかすために西野をゲームに誘った。
西野も俺も、はっきり言って、下手だった。
しばらくすると、少し離れたところから様子をうかがっていた智樹が寄ってきて、コントローラーの使い方のこつを教えてくれた。
そして、いつの間にかすっかり西野に懐いて、「まどかちゃんだけ、裏技教えてあげる」などとふたりで組んで俺を倒そうとするのでまいってしまった。
面白いのか面白くないのかもよくわからないまま、物珍しさからなんとなくゲームを続けていたところ、玄関のドアが開閉される音が聞こえて、しばらくすると、親父がリビングに入ってきた。
「お、おお。いらっしゃい」
上機嫌で笑う親父に、西野は立ち上がって頭を下げた。
「こんにちは。お邪魔しています。西野まどかです。お世話になります」
「うん、うん。ゆっくりして行かれ。まあこげな狭い家じゃけど」
「そんな。ご実家がこんな大きなビルだと思ってなくて、びっくりしました。あ、今日は新幹線、グリーン車まで取っていただいて、ありがとうございました。俺にはもったいないと思ったんですけど、やっぱりすごく快適でした」
西野は新幹線で俺が言った軽口を真に受けて、本当にグリーン車の礼を言った。
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