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第三章 帰郷(8)
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「いやいやいや。あんな安い席でよけりゃあね、いくらでも取りますよ。グランクラスいうのが、あればよかったんじゃけどね、東海道新幹線にはないけんね、仕方がないわ」
赤ら顔の親父は、まだ夕方なのに、明らかにかなり酔っぱらっていた。俺は恥ずかしかった。
「もういいよ、西野。上行こう。俺の部屋」
智樹が不満の声をあげ、西野も話の途中で席を外すことに戸惑った様子だったが、俺が手をつかんで引くと、おとなしくついてきた。
「隆弘。今日はカニ食いに連れて行ってやるけん。お友達も好きじゃろ、カニは」
親父が後ろから話しかけてきて、西野は俺に手を引かれるまま、俺が返事しないことに戸惑って、「好きです、ありがとうございます」などと親父に向かって返していたが、俺は振り向かずに西野を連れて5階に上がった。
部屋に入ると、俺は
「ごめん」
と西野に謝った。西野は不思議そうに、
「何が」
「なんか親父、うるさくて」
「全然、そんなことないよ。素敵なご家族だね」
西野が心からそう言っているのがわかったので、俺はそれ以上、何も言わなかった。
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