アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第三章 帰郷(11)
-
「2番って、すごいですね。うちの学年、2百人くらいいますから」
今初めて聞いたというふうに、西野が答える。
実際は成績上位者名は廊下に貼り出されているので、たぶん西野も目にしているはずだった。今回は、海音寺に負けた。
「まあ、明頌学園で2番じゃったら、全国で2番いうことじゃろ?そしたら、東大には余裕で入れるじゃろうか」
俺は話に口を挟まないようにしていたが、いい加減、恥ずかしくなって
「そんなの、全国で2番なわけないだろ。全然違うし。そもそも、今の学校の成績と、大学入試は、全然関係ないの。入試は一発勝負。学校の成績がそれまでいくらよくても、入試の出来が悪かったら落ちるの。あと、俺、別に東大受けるって決めたわけじゃないから」
親父は、正気を疑うと言いたげな目で俺を見て、
「何を言うとる。東大行ける頭があるのに、東大行かんアホがおるか」
とあきれたように言う。俺はうんざりして、
「いるよ。いくらでも。親父たちの時代の感覚とは、今は全然違うの。卒業後にどう働きたいか考えたら、東大以外の選択肢の方が有益なことだって」
「ある、わけがない。お前はまだ世の中を知らんからそんなことが言えるんじゃ。天下の東大卒いう肩書が、仕事をしとって、どんだけ自分に箔をつけてくれるか」
世の中を知らんから、などと人生経験の浅さを突かれると、そんなのは俺にどうしようもないだろとカチンとくる。俺は思わず、
「親父の方こそ、大学のことなんか何もわからんじゃろ。自分は高校中退のくせに」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 246