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第三章 帰郷(13)
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その日はそのまま、親父と口をきくこともなく、風呂から上がるとすぐ部屋にこもって眠ってしまったのだが、次の日のまだ朝早い時間に、西野とともに親父にたたき起こされた。
「起きい。釣りに行くで」
「今、何時だと思ってんだよ」
カーテンの外に、まだ朝日の気配はうっすらとしかない。寝起きのぼんやりした頭で時計を見ると、まだ5時だった。
「今の時分は日中暑うて、炎天下に釣りはきついけん、朝早めに行くんじゃ」
「は?知らないよ。またひとり決めして、釣りに行くとか聞いてないし。今日は俺ら、市内の観光に行く予定で」
俺が反駁しようとしたとき、西野が、
「俺、釣り、行きたい」
と言い出した。親父は満足げな顔で、
「ほれ、見てみい。西野君もそう言うとる」
俺は西野の気遣いが申し訳なくて、
「西野、いいんだよ」
と止めたが、
「俺、本当に、釣りの方がいい。観光は、明日にしよ」
西野は心底そう思っている、という顔つきで、俺に請うてくる。
俺がもう何も言わないでいると、親父は勝ち誇ったように、「ほれみい。早う用意せえ。下で待っとるで」と言い残してさっさと部屋を出て行ってしまった。
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