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第三章 帰郷(29)
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だから、もっと西野の唇と舌と指による絶妙な刺激を感じていたい欲求を抑えて、
「待って」
と俺は西野を止めた。
自分の快感だけを追うより、西野の感じている顔を見て、声を聞いている方が、余計なことを考えずに済むと思ったのだ。俺は言った。
「俺、初めてだから、最初は、西野の中でいきたい」
「出して、いいよ。俺、全部、飲むつもりだった」
西野は俺を上目に見上げながら、そう答えた。俺に対する西野の従順さに心を打たれながら、
「あの、じゃなくて、俺、下に入れて、いきたい」
「あ。うん」
俺の希望は予想外のことだったのか、西野は頬を真っ赤にして、どこか戸惑っているような様子があった。
「だめかな。だめなら」
「だめじゃない。いいよ。嶋田がしたいなら、俺、いい」
可愛いことを言う彼の上半身を起き上がらせ、俺はまた口づけた。
「じゃあ、後ろからと、前からとどっちがいいのかな?」
俺が尋ねると、西野は
「あ」
とつぶやいて、ますます顔を赤くした。そして、西野は恥ずかしそうに小さな声で、
「わかんない。俺も、したことないから」
「え!ないの!?」
「痛そうだから、足の間に挟んでしたことしかない。俺、好きな人と、好きだから抱き合ってたわけじゃなくて、前のはお互い、ただの処理だったから」
それを聞いて、また、さっきよりもっと複雑な感情が俺の胸中に渦巻く。
ただの処理、という全く思い入れのない表現にほっと安堵し、かつての相手とは挿入の経験まではないことを知って嬉しさがこみあげてくる一方で、そんな軽い扱いの相手にでも、あんな濃厚な口での奉仕を仕込まれる西野の節操のなさがあらためて恨めしく思える。
さらに、やっぱり西野は痛がるだろうかと思うと、ひるむ気持ちも出てくる。俺たちの初めての経験を、西野にとって嫌な思い出にはしたくなかった。
「俺も、じゃあ、それでもいいよ。それだとどうしたらいいのかな」
俺が努めて明るく、方針を変える提案をすると、
「あ、でも」
と西野は口ごもった。彼は、視線をシーツに落として、言葉を選んでいる様子だったが、またうるんだ瞳で俺の目を見て、
「俺、痛くてもいいから、嶋田に、入れて、ほしいよ」
とかすれた甘い声で囁いたのだ。
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