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第三章 帰郷(33)
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俺はこれまで感じたことのないほどの西野へのいとおしさで胸がいっぱいになった。今日何度したのかわからない口づけを、もう一度丁寧に繰り返して、
「好きだよ」
と心を込めて西野に告げた。
西野はそんな俺をじっと見つめて、
「俺も好き。俺の方が、絶対に、好き」
などと真剣な表情で言うので、俺は心底満ちたりた気分になった。
それからかなり長い時間、そんな、甘いだけでなんの発展性もない睦言をお互いに納得いくまで言い交わしたあと、俺たちはようやく重い身体を起こして、お互いに脱ぎ散らした服を拾い合い、身に着けた。
そうして、俺のベッドに戻って、また、ふたりで身を寄せ合い、すでに何度も聞いたような睦言や身体の熱を呼び戻さない程度の戯れ合いを繰り返しながら、深夜にようやく眠りについた。
次の日、すでに取ってある新幹線の予約時間に間に合うように、何とか俺たちは起床した。
なんだか朝の爽やかな空気の中、家族と顔を合わせるのが面映ゆい思いで、リビングまで降りて行ったのだが、そこには母しかおらず、父はすでに仕事、智樹はラジオ体操に行ったまま帰ってこない、たぶん友達と虫取りでもしてるんだろうと母は笑った。
俺たちがダイニングテーブルで母に用意してもらった朝食を食べていると、階段を降りる音がして、眠そうな顔をした篤哉がリビングに入ってきた。
篤哉とまともに顔を合わせるのは、この帰省中で初めてだった。年が近いせいもあって、なんだか会うと照れくさく、最近はろくに口をきかなかったが、今回はこのまま話もせずに帰るのかと思っていたので、内心少し嬉しかった。
俺たちを見て、リビングのテレビの前にでも行くだろうかと思ったが、篤哉は俺たちのいるダイニングテーブルの椅子に黙って腰を下ろし、「母ちゃん、飯」とキッチンにいた母に声をかけた。
朝食を運んできた母が、「あんた、今日は早いんね」と篤哉に声をかけると、篤哉は「図書館、約束あるから」と答えた。よく見ると、篤哉が手にしていた本が何かの教科の参考書だったので、本当に受験勉強してるのかと意外に思った。
母がキッチンにひっこむと、篤哉はこちらをちらりと窺った。
西野がこのタイミングをのがさず、こんにちは、と笑顔で篤哉に声をかけた。篤哉と西野は、これが初対面だった。
篤哉は、どうも、と頷くように少し頭を下げて、つまらなさそうに、俺に「カノジョ?」と訊いた。
こいつもか、とあきれながら、「学校の、友達」と俺が訂正すると、篤哉は、
「あ、いや、それはわかってんだけど・・・・・・つきあってんのって意味」
などと言うので、西野と俺は一瞬固まってしまった。
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