アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第六章 海音寺(6)
-
そのあと、海音寺は、ぐるりと、俺のものと変わらない間取りに思えるこの部屋を見回して、
「やっぱ個室は快適だよな。2年になれば個室もらえるのわかってたけど、それまで待てないと思って、この仕事受けることにしたんだ。同室だったやつがガサツでさ、つくづく、まどかと一緒にいた快適な日々が懐かしくなったよ。やっぱりルームメイトの当たりはずれってあるもんだな」
「そうだね、それはあると思うよ」
もしあの春、海音寺とのことが表ざたにならず、そのまま、第二ドミトリーに入居していたら、嶋田と同室になることもなく、いまだ彼を知らずに生きていたのかもしれない、と思うと、おそろしくなる。それを考えると、あんな問題が発覚したこと自体が、大変な僥倖に思え、その一翼を担ってくれた海音寺にも感謝したくなるくらいだった。
「まどかは、どうして寮長になったの?俺が第二の寮長やるって聞いて、また会いたくなったとか?」
「そうかもね」
俺が、海音寺の軽口に調子を合わせると、海音寺は、探るような目でこちらを見て、
「いや、なんか他にあるはずだよ。俺、第一は嶋田にほぼ決まりって橘さんから聞いてたもん」
と俺に言った。俺は、
「そんな、たいした理由はないよ。嶋田は、たぶんテニス部でも部長やることになりそうだって言うし、それで寮長まで兼任することになったら、勉強とかにも支障が出るかなと思って」
とあいまいに返事すると、
「確かに、まどかのおかげで、勉強に支障は出てないみたいだよね。中間考査の、あの数学、2科目とも満点だったって?あいつ、理Ⅲでも受けるつもり?」
海音寺はたぶん軽く口にしただけの言葉だったのに、とっさに適当な返事が出てこずに、俺が黙ってしまったのを、海音寺は敏感に読み取って、
「あれ、そうなの?」
と目を見開いて、訊いてくる。
「さあ、俺はよく知らないけど」
悟られているのに今更だったが、俺が曖昧に答えると、海音寺は、面白そうに
「パチンコ屋は継がなくていいの?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
93 / 246