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第十一章 三学期(6)
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俺と海音寺は、そんなふうにして大っぴらに外で会ったりすることはなかったが、周囲はみんな、俺が嶋田と別れて、海音寺とつき合いだしたことに気づいていた。
それはそうだと思う。あれほどぴったりとくっついていつも行動を共にしていた嶋田と、全く一緒にいるところを見せず、顔を合わせることすら互いに避けるように、食事や登下校の時間をずらして生活していたのだから、別れたことに気づかれないわけがない。
また、海音寺とのことも、夜はともかく、昼間は、頻繁に第二の寮長室に出入りしているところを人に見られていたから、すぐにみんなどういうことだか理解したようだった。
嶋田とつき合いだしたあとも、俺は、相変わらず「まどかちゃん」扱いで、はっきり言って、ちやほやされていたことに全く変わりがなかったのだが、嶋田とつき合いだしてからほんの数か月で海音寺に乗り換えた、と発覚してからは、さすがに周りも引いてしまったようだ。
もう「まどかちゃん」などと軽々しく俺を呼ぶ者もなく、俺の周囲からはなんとなく人が引いていき、食堂などでも誰も近くの席に座らなくなった。
まあ、これはこれで、と俺が黙々とひとり食事を取っていると、
「ああ、男ふたりを手玉に取った悪人がいる」
と声がして、顔をあげると、桐谷さんが夕飯のトレイを持って立っていた。
「相変わらず、容赦ないですね」
俺が言うと、
「だって、ほんとのことじゃない」
と桐谷さんはさらりと返して、「ここ、いい?」と俺の向かいの席に腰を下ろした。
しばらくお互い、言葉もなく食事を続けていたのだが、ふいに桐谷さんが、
「どうしてるか、とか訊かないの?」
と主語もつけずに、問うてきた。
「訊く権利ないです」
俺が答えると、
「そう」
と桐谷さんはそれ以上何も言わず、また黙々と食事を再開した。
しかし、一度考え始めると、もうそのことしか考えられなくなる。食事が喉を通らなくなって、俺は箸を置いた。そして、
「どうしてますか」
トレイに置いた自分の箸を見つめながら、俺は桐谷さんに尋ねる。
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