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出会いは雨の中で 1
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その日は朝から雨が止むことなく降り続いていた。
近江 崇人(おうみ たかひと)は、一流企業の花杜コーポレーションに入社して6年目になる。
仕事を一人で任される事が多くなってきて、忙しい日々を送っていた。
(今日に限って外回りの営業とは…ついてねーな)
本日3件目の商談を終えたが、スーツの足元の裾は濡れていてひどく気持ち悪い。
少しでも乾かしていたいと思ってタオルを鞄に入れていたが、そのタオルさえも酷く濡れてしまい意味もなくなり、絞ったら大量の雨水が出てきた。
(そのうち、傘も役に立たなくなるかもな)
さっきよりも、どんどん雨足が強くなってきていた。
近くの駅へと歩いていたが、これから列車に乗って自宅に帰るのに、また雨に当たって歩いて帰るとなると億劫になる。
(あー、タクシー拾うか。もう仕事が終わったから直帰するって言ってたし、さっさと風呂入って温まりたい……ん?)
今日の昼前にも、この駅前広場を通った。
何か違和感がある。
(なんか…引っ掛かる、あっ)
あの大きな木の下のベンチに座ってる男。
(そうだ、アイツ昼にも同じ所に座ってた。はっ?まてまて、今19時過ぎだぞ??)
時計を確認した。
じゃあ、最低7時間はあそこにいた…のか?
(待ち人来ずとか?)
傘も指さずに、ずっと座ってる男の横顔がとても印象的だった。
ただ一点に見つめている目には光がなく、なのにこの激しい雨に打たれているが、涙を流しているみたいに見えて神秘的。
高そうなスーツ姿をしているが、どこか危なげな雰囲気が出ていた。
目が離れない。
綺麗な横顔の男に釘付けになった。
(なんだってこんな天気に…)
足が勝手にその男に向けて動いた。
自分でも信じられない事に、その男に声をかけていた。
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