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家 *壱夜side*
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崇人の出勤時間ギリギリまで、キスをしていた。
名残惜しそうに崇人は会社に行った。
(カッコイイ人なのに、可愛い)
こんなに個人として欲しいと、求められるとは思わなかった。
家にいると、いわゆる御家のためと個人を消され生きてきた。
自分を見て欲しいと、子供の時はあれこれ考えて猛勉強をして一位を取ったり、賞を取ったり喜んでくれると思っていたが違った。
当たり前、何をしても出来て当たり前。
成績が落ちたら落胆され、頑張っても褒められなかった。
父が死んで、重圧が襲ってきた。
今はお祖父様が家を仕切ってはいるが、その次が自分なんて…。
逃げても無駄なのは解っていた。
けど一度だけ、この檻から出て見たかった。
自由になりたかった。
そう思ったら財布も持たずに家を出ていた。
少しのお金とスマホを持ち、駅に行った。
スマホはGPSでわかってしまうと思い、駅で電源を落として、すぐ乗れる列車の切符を買った。
普段は送り迎えの車での移動だけだが、小さい頃に2度だけ父と列車に乗った事があったので乗れた。
父との思い出は以外に少ない。
オムライスが好きなのは、父が作ってくれたから。
食べた時はすぐお祖父様の耳に入り、こっぴどく怒られた。
壱夜はスマホを手に取り見た。
ここで電源を入れるわけにはいかない。
自分の事が欲しいと言った、崇人の顔を思い出す。
(崇人さんを家の事で巻き込んだら、駄目だ…)
首を横に振り、気分を変えるために部屋を見渡し立ち上がって歩いた。
独り暮らしの割には広いと思う。
キッチンも自炊するから、すごく使いやすそうに広々としているし、お風呂も広かった。
仕事部屋として一部屋欲しかったようで3LDKのようだ。
(崇人さん、仕事は何してるのかな?)
今の案件、と言っていたから他にも抱えているのだろう。
(忙しい人なのかな…それに)
恋人はいないのだろうか。
この部屋に女性の匂いはしない。
男の独り暮らしだから殺風景だ。
男性とは?
ふるふるっと頭をふった。
どうも今日は、何を考えていてもマイナスの事しか考えられない。
(…駄目だ)
昨日も今日も人生で一番と言っていいほど、気持ちが嬉しくて舞い上がっていたのにネガティブ過ぎる。
ソファーに戻り、クッションをお腹に抱えながら目を閉じた。
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